http://www.bbc.com/japanese/44364955

2018/06/05
米アップルは4日、米カリフォルニア州サンノゼで開発者向け年次会議「ワールドワイド・ディベロッパーズ・カンファレンス(WWDC)」を開催した。アップルは、スマートフォン「iPhone」やタブレット「iPad」向けの基本ソフト「iOS」と同社製パーソナルコンピュータ「Mac」向け基本ソフト「Mac OS」の次期バージョンで、フェイスブックが用いているウェブ利用者の自動追跡ツールを妨害する予定だと明らかにした。

「我々はあれ(追跡ツール)を遮断する」。アップルのソフトウェアチーフ、クレイグ・フェデリーニ氏は会議でそう宣言した。

フェデリーニ氏は、フェイスブックに利用者のウェブ上での行動を監視を許可する前に、利用者自身の承認を求める機能を、アップル社開発のウェブブラウザ「Safari」に組み込むとも付け加えた。
この措置はアップルとフェイスブック間の緊張を高める可能性が高い。
アップルのティム・クックCEOは以前から、フェイスブックの施策を「プライバシーの侵害」だとしてきた。フェイスブックの創業者、マーク・ザッカーバーグ氏は後にこの意見を「軽薄だ」と非難した。

フェデリーニ氏はWWDCで、フェイスブックは人々が気づかないかもしれないやり方で人を監視し続けていると述べた。
「いいねボタン、シェアボタン、コメント欄。これらは全て見られている」
「クリックしたかしないかにかかわらず、結局それらはあなたを追跡するのに使われる可能性がある」
フェデリーニ氏は、「あなたはフェイスブックを表示中、Facebook.comにクッキー(ブラウザに保存された利用情報ファイル)や使用可能なデータを使うことを許可しますか?」とたずねる警告文をスクリーンに表示させ、「あなたは自分の情報を個人的なものにとどめておくよう決められるようになる」と語った。

サイバーセキュリティの専門家ケビン・ボーモント氏は、アップルが導入する措置を称賛する。同氏は、「アップルはブラウザの動作の核心部分を変更している。より良いプライバシー保護を可能にする、驚くほど大きな変更だ」と述べた。
「企業がプライバシーに関して行う変更は大体が小さく漸進的で、市場を大きく揺るがすことはない。それに対しアップルは、ウェブサイト上で追跡機能が有効にされる際に利用者が確認できるようにした。実際に視覚的に分かるようにしたのだ。新たな地平を開く試みだ」
ボーモント氏は、大量の警告文を表示させようというアップルの試みは、利用者にとってわずらわしいものになる危険性もあると指摘する。

「もしかすると、アップルは利用者が自らの機器を追跡する許可を繰り返し与えるよりも、ウェブサイトが追跡を抑制する方に賭けているのではないか」と同氏は付け加えた。
アップルは、MacOSの次期バージョン「Mojave」では、広告主がクッキーを消去した利用者を追跡しようとする「フィンガープリンティング」と呼ばれる技術に対抗するとも発表した。
この手法は、フォントやプラグインなど、他の詳細設定と共にインストールされるファイルを使ってコンピューターを識別する。
フィンガープリンティングに対応するため、アップルはより少ない接続元のコンピューターに関する詳細情報しか持たないウェブページを提示した。
「結果として、あなたのMacと他の皆のMacとの見分けがよりつきづらくなるので、データ会社にとってはあなたの機器を個別に識別するのが劇的に難しくなる」とフェデリーニ氏は説明した。

シンクタンク「テックピニオンズ」のベン・ベイジャリン氏はツイッターに、「今日のWWDCでの主要な点。それは、アップルが広告ビジネスモデルの無料サービスを本当に嫌っているということだ」と投稿した。

中略

<解説>デイブ・リー BBC北米テクノロジー担当記者

アップルの、利用者がインターネット上を回遊する際のデータ追跡を妨害する試みは、利益を生む上で個人情報に依存している企業に真の影響を与えるかもしれない。
そしてもちろん、アップルがすることは、他社も頻繁に追従する。なので、今回の発表が流行を作るとすれば、フェイスブックには悩みの種になるかもしれない。

新たな機能を紹介するデモ全てで、利用者が止めたい、あるいは少なくとも制限したいと望むものの例としてフェイスブックとインスタグラムが使われていた。2つともフェイスブック社が所有しているサービスだ。

現在の疑問は、フェイスブックや他の広告テクノロジー企業がアップルを出し抜くことを狙って、利用者のインターネット上での行動を追跡する新たな方法を見つけようととするのかどうかだ。

(英語記事 Apple jams Facebook's web-tracking tools)