職員の長時間労働を抑制しようと、大阪府寝屋川市役所が4月26日から、事前承認なしに残業した場合、定められた終業時間から30分後にパソコンが強制終了するシステムを導入した。「残業を減らすには強制的な方法も必要」という発想で始まった自治体としては全国的にも珍しいこの取り組み。開始1カ月の段階では「残業減だけでなく、業務の見直しにもなった」と職員の反応は上々だという。

■画面に警告表示

 寝屋川市の職員の一般的な勤務時間は午前9時から午後5時半までだ。

 終業時間の1時間半前の午後4時。承認申請をしていない職員のパソコン画面に、残業するには承認が必要という「お知らせ」が表示される。同様の警告画面が30分ごとに表示された後、定時の終業時間を20分過ぎた午後5時50分になると、1分ごとに警告が繰り返され、午後6時には強制終了される。市の担当者は「最後の10分は警告続きで、ほとんど業務にならないはずだ」と話す。

 なぜ、これほどの対策が必要なのか。背景には、職員数減少の一方、業務の多様化で、職員の残業時間がなかなか減らない現状があった。

■月80時間以上約30人

 毎週水、金曜日を「ノー残業デー」とし早期退庁を促していたが、次第に形骸化。全職員約1140人の残業時間を調べたところ、平成29年12月から30年2月までの1カ月平均で、市が長時間労働と捉える80時間以上の残業が約30人、100時間以上も約10人いた。

 強制終了には「やり過ぎじゃないか」との声もあったが、約50人の職員を対象に試行実験をしたところ、前年に比べ残業が1割減少。実験に参加した職員の6割が「全庁的な導入は有効だ」との意見だったこともあり、導入が決まった。

 対象者は、課長代理以下の約千人。強制終了されても、作業中のデータはきちんと保存される仕組みになっており、災害時などの緊急時はこのシステムは解除される。

 市によると、導入から1カ月が経過したが、残業する職員数は減少傾向にあり、住民サービスの低下による苦情などは寄せられていないという。複数の自治体からは導入に関する問い合わせもきているといい、市は近く1カ月の残業状況などを公表する予定だ。

■承認が必要、進捗説明も

 また、残業には承認が必要で、あわせて業務の進捗(しんちょく)状況なども説明するため、「何のために残業しているのか」という目的が明確になったり、上司と部下の連携もスムーズになったりする効果も出ているという。自治体企画政策課の吉田紀章課長(45)は「ほかにも、前例踏襲で行ってきた業務が本当に必要なのかと見直す機会にもなっている」と話している。

2018.6.7 14:05
産経WEST
https://www.sankei.com/west/news/180607/wst1806070051-n1.html