明治初期の大阪に、府とは別に堺県があった。

 廃藩置県の前の1868年に誕生。現在の堺市を中心に県域は一時、府南部や奈良県にまで広がり、
独自の紙幣や教科書を作っていたとされるが、わずか13年後に姿を消した。
今年で誕生150年を迎え、堺市博物館(堺区)は堺県を紹介する企画展を開催。
「あまり知られていない地元の歴史に目を向けてほしい」とする。

 堺県が誕生したのは、明治元年にあたる68年。新政府が幕府の奉行所がある堺を管理するため、
6月に大阪府から分離し、現在の美原区を除く堺市を県域としてスタートした。

 明治に入り、現在の枚方市にあたる地域から府南部全域までを編入。
71年の廃藩置県後も堺県として存続し、76年4月には奈良県も加えられ、
大阪府をしのぐ面積を誇るまでになった。

 その後、面積が小さく、財政基盤の弱かった大阪府を、京都など周辺府県と同規模にするため、
堺県は81年2月、府に編入されて廃止に。87年11月には、奈良県が分離した。

 堺県については現在、堺市でも知る人は少なく、明治維新から150年の今年、
幕末から明治初期に関心が高まっていることから、堺県に関する展示を企画した。

 会場には、行政文書など約60点が並ぶ。新政府の施策を伝えるため、
県が掲げた木製の立て札には「堺縣(県)役所」の文字が見える。73年の職員名簿「堺縣職員分課表」には、
知事と職員の氏名が記されている。

 大和川の治水工事の費用捻出を目的に、69年に発行した紙幣も展示。
江戸時代の藩札のように県内でしか通用しなかったという。

 73年に完成した浜寺公園や76〜77年に開かれた「堺博覧会」も紹介。
小学校や堺師範学校で使われた教科書を見ることもできる。

 矢内一磨学芸員は「国全体で近代化を進める中、独自紙幣や教育の充実など、
堺県が短期間に先進的な取り組みを行っていたことがわかる」と指摘する。

 7月8日まで。月曜休館。
観覧料は一般200円、高校・大学生100円、小中学生50円。
10、17、24日には学芸員による展示品解説などがある。

画像:
堺県が発行した紙幣
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堺県が設置した立て札。「堺縣役所」の文字が記されている
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読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/20180610-OYT1T50049.html