https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180613-00000035-mai-soci

移転が進む九州大学箱崎キャンパス(福岡市東区)の歴史ある机や棚などの木製什器(じゅうき)が、大量廃棄の危機に陥っている。
九大総合研究博物館が約10年にわたって回収し廃棄から救ってきたが、今年9月の移転完了に向け、さらに大量の回収が見込まれ
運び出す費用が足りないためだ。戦前から受け継がれてきた財産を守ろうと、インターネットで資金を募るクラウドファンディングに乗り出した。

1911(明治44)年創立の箱崎キャンパスは2005年度から段階的に移転が進められ、長年使われてきた机や棚、椅子などが廃棄されていた。
移転先の伊都キャンパス(同市西区)に十分なスペースがなかったり、移転を機に更新されたりしたためだが、廃棄を知った九大総合研究博物館の
三島美佐子准教授(博物館学)が独自に回収を始め、09年に工学部内の什器を大量に救出。その後、賛同した農学部教授らとともに
保全活用プロジェクトを始め、これまでに約400点を回収した。

中には戦火を免れて受け継がれてきたものも少なくなく、京都帝国大学福岡医科大学時代の1907年ごろに使われていたとみられる机もある。
一部の机や椅子はレトロな店構えの熊本市の橙(だいだい)書店や、福岡市科学館に貸し出し再利用につなげてきた。

だが、今年5月から農学部や文学部などが移転する最終段階に入り、救出すべき什器は約10年間で回収してきた量に匹敵するとみられている。
これまではキャンパスの空きスペースに移してきたが、今後は学外の倉庫で保管する予定で、多額の運搬費がかかる。
新キャンパスへの什器の移転には公費が出るが、什器の回収・保存は「廃棄物の再収集」となり対象外という。費用をまかなうため、
インターネットで資金を集めるクラウドファンディングを5月から始めた。

移転完了前の7月末までに200万円が必要。寄付は1口3000〜50万円まで7段階あり、額によって什器の貸し出しや、
博物館の見学ツアーなどの特典がある。

三島准教授は「建物はリノベーションや重要文化財に指定され大切にされるが、物は一新されてしまう。古いから捨てるのではなく、
その歴史や価値を見直してほしい。そうした思いを共有し、大切に使ってくれる人に貸し出すことで保存していきたい」と訴える。