1) 胃アニサキス症
魚介類の生食後数時間して,激しい上腹部痛,悪心,嘔吐をもって発症するのが胃アニサキス症の特徴で,人体症例の大半がこの症状を呈する(劇症型胃アニサキス症).
食歴に関する問診と臨床症状から劇症型胃アニサキス症が疑われる場合は,胃内視鏡検査で虫体を検索し(虫体1匹の穿入で発症することも多い,),検出虫体の形態と遺伝子配列から確定診断する.しかし健康診断時等の内視鏡検査で,胃粘膜に穿入する虫体が見つかる無症候例もある(緩和型胃アニサキス症).

2) 腸アニサキス症
虫体が腸に穿入する腸アニサキス症では,腹痛,悪心,嘔吐などの症状が見られ,時に腸閉塞や腸穿孔を併発する.腸閉塞などで手術を受けた例では,摘出部位の病理組織標本に虫体を検索し,原因を確定する.

3) 消化管外アニサキス症
まれに虫体が消化管を穿通して腹腔内へ脱出後,大網,腸間膜,腹壁皮下などに移行し,肉芽腫を形成することもある.虫体寄生部位に応じた症状が現れる.

4) アニサキスアレルギー
魚介類の生食後に蕁麻疹を主症状とするアニサキスアレルギーを認めることがある.更に血圧降下や呼吸不全,意識消失などのアナフィラキシー症状を呈した症例も報告されている.
クローニングを含めたアニサキスアレルゲンの性状解析が進んでいるが,アレルゲンに対するIgE抗体の検出が症例の診断に役立つとされる.