東北電、遠のく電気料金値下げ 原発への工事費や競争激化が影響

河北新報 2018年06月22日金曜日
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201806/20180622_12015.html

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を受けて2013年以降、引き上げられた東北電力の電気料金は、引き下げの見通しが立たないまま推移している。原子力規制委員会の審査で、女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の安全対策の追加工事が必要になり、東通原発(青森県東通村)は審査が進まず、ともに工事完了時期を延期した。工事費の増大、再稼働の遅れに加え、電力全面自由化による経営環境の変化が大きく影響している。

 「資材調達の低減など経営効率化に努力し、収支悪化を緩和したい」
 安全対策工事の費用削減について、東北電の原田宏哉社長は5月30日の記者会見でこう強調した。
 東北電は今年、女川2号機で複数の工事を追加した。ほぼ完成していた海抜約29メートルの防潮堤に沈下防止の地盤改良工事を行うほか、防潮堤を越える津波対策や火災、竜巻対策も実施を決定。いずれも規制委から「安全性が不十分」と見直しを求められた。
 東北電は女川2号機と東通の工事費を三千数百億円と見込んでいるが、実際の支出額は3月末までに約1720億円に上った。大半は女川2号機の支出で、追加工事によって総額が増える可能性は否定できない。
 女川2号機の工事の完了時期は18年度後半から20年度に、東通も21年度に延期されて再稼働が遠のいた。13年に引き上げた電気料金への姿勢も変わりつつある。
 福島事故後に原発が止まったため、東北電の販売電力の約8割を火力発電が占める。原田社長は燃料費が利益を圧迫すると説明。「女川2号機と東通の2基が動けば利益を年500億円押し上げる」と訴え、原発再稼働を料金引き下げの条件に挙げてきた。
 しかし、競争激化で東北電エリアでは東電など他の大手が直近2年間で4000件以上の大口顧客を奪い、経営環境は厳しさを増している。東北電の連結自己資本比率は3月末時点で17.3%と前年比0.5ポイントの改善にとどまり、「20年までに25%以上」の経営目標の達成は厳しい。
 原田社長は4月の会見で料金引き下げのタイミングを問われ、「震災で傷ついた経営基盤が回復途上。値下げよりも、サービスを充実させるというのが現在の考え方だ」と語った。
 審査は東通が序盤、女川2号機は東北電が8月末までに論点の説明を終える意向だ。規制委は「論点の拾い漏れを懸念している」と慎重な姿勢を示し、審査の合格は見通せていない。
 東通村の越前靖夫村長が国に支援策を要請するなど、立地自治体には焦燥感も漂う。再稼働が遅れれば遅れるほど、経営環境の先行きも料金引き下げも不透明な情勢になっている。

[東北電力の電気料金引き上げ]2013年9月に家庭向けで平均8.94%、企業向けで平均15.24%引き上げた。本格改定による引き上げは1980年以来。料金原価には東日本大震災復旧費のほか、2011年度から5年間の原子力安全対策向上対策費として1526億円を盛り込んでいる。


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