横浜市立大学付属病院(横浜市金沢区)は25日、CT検査の結果が院内で適切に共有されず、腎臓がんの診断が5年余り遅れ、横浜市内の60代男性が今年4月に死亡したと発表した。同病院は「がんの適切な治療機会を逸した医療事故」として謝罪した。

 同病院によると、同大付属市民総合医療センター(同市南区)の70代の男性患者がCT検査を受け、膵臓(すいぞう)がんの疑いが見つかっていたにもかかわらず、院内の連携不足で約5カ月間その情報が放置されて昨年10月に死亡したのを受け、類似の事案がないか調べた。その結果、新たにセンターで2件、亡くなった男性を含め同病院で9件、がんなどの診断情報を記した画像診断報告書が共有されていないことなどがわかった。

 同病院で亡くなった男性は心臓の治療で循環器内科に定期的に通院。心臓内のカテーテル治療の実施に向け、2012年10月にCT検査を受けた。放射線科の医師がCT画像を確認し、腎臓がんの疑いがあると診断して翌日に報告書を作成した。

 しかし、循環器内科の担当医に直接伝えることはせず、この担当医も心臓部分が撮影されたCT画像を受け取ったが、電子カルテ上にあった報告書に気づかず、確認していなかった。医師は2人とも既に退職している。

 男性は他の医療機関でのCT検査で肺がんの疑いがわかり、今年3月に付属病院に緊急入院。その際、12年に撮影したCT画像の存在が発覚した。

 記者会見した相原道子病院長は「最初のCT検査の時点でもっと精査していれば手術ができた可能性はある。院内で確実に情報を共有できていなかった。責任を重く感じている」と述べた。

 今回判明したほかの10件のうち2件も、情報共有がされなかったことが治療に影響したという。この2件は開腹手術でがんを切除。情報が共有されていれば内視鏡手術で済んだ可能性があるという。また、がんが数ミリ大きくなり影響が「軽微」としたものが1件あり、残りの7件は治療への影響がなかったという。

 今回の調査では、画像診断の報告書を主治医などが確認していなかったケースが同病院で昨年6月までの1年間で計568件に上った。診断結果の報告は慣習的に、放射線科医から主治医へ電話で直接連絡するようになっていたが、ルール化されていなかった。

 同病院は再発防止策として、医師がコンピューター上でカルテを閲覧する際、目を通していない画像診断報告書の一覧を表示して注意を促すよう、システムを改修するなどとしている。(武井宏之、土肥修一)

2018年6月25日18時06分
朝日新聞デジタル

他ソース
横浜市大2病院 がん報告、11件見落とし 男性1人は死亡
https://mainichi.jp/articles/20180626/ddm/041/040/028000c