◆梅毒患者、増加の一途 女性10〜20代の感染が増加

性行為などで感染する梅毒の増加が続いている。
昨年は44年ぶりに報告数が5千件を超し、今年も昨年を上回るペースという。

地方都市や若い女性にも広がる。感染に気づきにくいため人にうつしやすい。
自分とは無関係と思わずに予防を心がけ、心当たりがあれば検査を受けることが大切だ。

■抗菌薬、12週間の服用が必要

梅毒は、感染から数週間後に性器や口の感染部位にしこりや潰瘍(かいよう)ができる。
ただ、治療しなくても症状が軽くなるため見過ごされやすい。

数カ月後には全身の皮膚や粘膜に赤い発疹が出現。
このときも治療せずに消えることがあるため、知らずに他人にうつしたり、治療が遅れて、記憶障害やまひなどの神経障害につながったりする恐れがある。

予防には、不特定多数の人との性行為を避けることが重要だ。
性行為の際は最初からコンドームをつけると、感染リスクを減らせる。

日本性感染症学会副理事長の石地尚興(いしじたかおき)・東京慈恵会医大教授(皮膚科)は「リスクのある性行為は避け、感染が心配なときは検査してほしい」と訴える。
感染の有無は血液検査でわかり、地域によっては保健所で無料で受けられる。

治療には抗菌薬が有効だ。
ただし最長で12週間飲み続ける必要があり、「途中で断念してしまう患者もいる」と性感染症に詳しい産婦人科医の北村邦夫・日本家族計画協会理事長は指摘する。

厚生労働省によると、海外では1度の注射で済む薬が使え、世界的に標準治療となっているという。
現在、厚労省はメーカーに開発を要請している。

患者の大半は成人男性だったが、今回の流行では20〜30代の女性にも広がる。
妊娠した女性が感染すると流産や死産したり、赤ちゃんの肝臓や目、耳に障害が起こったりする「先天梅毒」になる恐れがある。

厚労省によると、先天梅毒の赤ちゃんは13年に4人だったが16年は14人。
厚労省研究班の報告書によると、11〜15年の間に赤ちゃん20人がなり、うち3人が死亡、3人に後遺症があったという。

厚労省は4月、梅毒に感染した妊婦の早期治療につなげようと、診断した際に医師に義務づけている届け出の項目に「妊娠の有無」を加える方針を決めた。
また風俗業の従事歴なども項目に加え、感染経路を分析する方針だ。

朝日新聞 2018年6月27日09時32分
https://www.asahi.com/articles/ASL6V32VVL6VULBJ002.html