7/10(火) 9:20配信
朝日新聞デジタル


 名古屋市で2014年に男性(当時52)が殺害された事件で、同性を理由に遺族給付金が支給されないのは違法だとして、パートナーの男性が9日、愛知県に給付金不支給の決定取り消しを求める訴訟を名古屋地裁に起こした。

 事件は14年12月に発生。男性を刺殺した男については、名古屋地裁で懲役14年の判決が確定した。

 提訴したのは、同市中村区の内山靖英さん(43)。訴状によると、内山さんは殺害された男性と約20年間同居していた。内山さんが給料を男性の口座に入金、男性は家事などを担当し、事実上の婚姻関係にあったという。事件の刑事裁判でも「(2人が)夫婦同然の関係にあった」と認定した。

 そうした事情から、内山さんは国の犯罪被害給付制度に基づき、遺族として16年12月に愛知県公安委員会に遺族給付金を申請。だが、公安委は2人が同性だったことから「配偶者や事実上の婚姻関係には該当しない」と判断し、不支給と決定した。この決定を不服として、内山さんは国家公安委に審査請求している。

 給付制度が対象とする遺族は、配偶者や子、父母などのほか、事実上の婚姻関係にある相手も含む。同性のパートナーを除外する規定はないことから、弁護団は「2人は事実上の婚姻関係にあった。不支給決定は違法で取り消すべきだ」と訴えている。

 提訴後に内山さんらが記者会見。代理人弁護士が「なぜ、男女の(夫婦)関係では支給されるのに、ゲイとレズビアンには認められないのか。私たちは夫婦でした。夫を殺されたつらさを差別しないで下さい」などと、内山さんの意見陳述を代読した。同じ同性愛者に、自身の気持ちを分かってほしかったことなどから、実名で提訴を公表したという。

 提訴について、県公安委は「事実が確認できないので、回答できません」としている。(仲程雄平)


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〈犯罪被害給付制度〉 犯罪により死亡したり、障害が残ったりした被害者に、国が給付金を支給する制度。死亡した場合は遺族給付金が支払われ、対象は配偶者(事実上の婚姻関係を含む)、子、父母、孫、祖父母、きょうだいとしている。同性のパートナーを除外する規定はない。犯罪被害を知った日から2年以内か、犯罪被害の発生から7年以内に申請し、各都道府県の公安委員会が支給の可否などを決める。決定に不服がある場合は、国家公安委員会に審査請求できる。

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