倉敷市真備町の浸水エリアとバックウオーター現象
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 濁流が住宅街に押し寄せた岡山県倉敷市真備町地区。県などへの取材で、同地区では高梁(たかはし)川の支流で5カ所の堤防の決壊が確認されたことが分かった。専門家は、決壊の一因として、豪雨などで水位が高まった川が支流の流れをせき止める「バックウオーター現象」が起きた可能性を指摘している。

 「ここまでの洪水は経験がない」。真備町有井の会社員、小西哲司さん(47)は9日、浸水した自宅の片付けに追われながら淡々と語った。子供のときから住んでいるが、大型とされた台風が通過した際もここまでの被害はなかった。

 未曽有の被害をもたらした原因とされるのがバックウオーター現象。豪雨などで川の本流の水位が上がることで、本流に流れ込むべき支流の水が、壁にぶつかるように流れを阻害され、行き場を失ってあふれ出す現象を指す。

 国交省によると、真備町では、高梁川の支流の小田川で決壊が2カ所発生。岡山県も、支流の高馬(たかま)川などで3カ所の決壊を確認しており、いずれも川の合流地点付近という。地形的にも高梁川と小田川に挟まれてたまった水の逃げ場がなく、浸水が長引き、その範囲は約1200ヘクタールに及んだ。

 今回、多くの孤立者が出た町内の「まび記念病院」一帯は、倉敷市の洪水・土砂災害ハザードマップで、高梁川などが決壊すると2階の軒下以上が浸水すると想定されていた地域。小田川沿いでは過去にも洪水が発生し、県内で昭和47年に15人、同51年には18人の死者・行方不明者を出した。

 国交省も危険性を認識し、小田川の水位を下げるため、高梁川との合流地点を下流に付け替える工事を今年秋から始める予定だった。しかし、今回の豪雨には間に合わなかった。

 岡山大の前野詩朗教授(河川工学)は「高梁川と小田川の合流地点は、直後に高梁川が湾曲して川幅が狭くなるボトルネック構造で、水位が高めだった。豪雨で水かさが一層増したことによりバックウオーター現象が起き、小田川の堤防を決壊させた可能性がある」と指摘した。

 高梁川と小田川の合流地点付近は、決壊に至らなかった場所でも、かつてないほど増水したとされる。バックウオーター現象は鬼怒(きぬ)川の堤防が決壊した平成27年の関東・東北豪雨などでも起きたとの指摘がある。

 前野教授は「川が合流する地点ではどこでも起こり得る現象だ」と注意を呼びかけている。

産経新聞 2018.7.10 06:50
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