カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法が成立したことを受け、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)へのIR誘致を目指す関西財界は「経済活性化の起爆剤」と歓迎している。2024(平成36)年までにIRを開業し、同じ夢洲に誘致を目指す25年国際博覧会(万博)で新しい大阪湾岸の姿を世界に披露したい戦略で、経済効果を地域に波及させる仕組みづくりも課題となる。(牛島要平)

 実施法成立を受け、関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)は20日、「集客力の強化や経済活性に大きく寄与すると期待されるIRの整備が、関西で早期に実現するよう取り組みたい」とコメント。関西経済同友会の黒田章裕代表幹事(コクヨ会長)も「25年万博の開催と合わせ、24年までのIR開業は大阪・関西の経済活性化を考える上で悲願」と期待を寄せた。

 IR事業者選定などの手続きや工事期間を考慮すると、開業までの日程は相当厳しいとされる。実施法成立がこれ以上ずれ込めば「万博に間に合わない」と危惧されただけに、財界には安堵(あんど)感が広がる。

 大阪商工会議所の尾崎裕会頭(大阪ガス会長)は20日の定例会見で「IRが雇用やまちづくりも含めて大阪・関西に溶けこみ、有機的につながることを(行政などが)考えてほしい」と注文を付けた。

 その上で、関西が強みを持つ医療関係の国際会議をIRで開催するなど、開業後にも関西財界とIR事業者が継続的に協議できる場を設けるよう求めていく方針も示した。

 ただし、IRをめぐって関西経済3団体は一枚岩といえない面もある。IR誘致を積極的に提唱してきたのが同友会。平成24年3月、東京一極集中を食い止める切り札としてIRを提言した。一方、関経連と大商は当初、ギャンブル依存症への懸念などから誘致に慎重だった。

 潮目が変わったのは、28年9月に安倍晋三首相が万博誘致を推進する姿勢を表明したこと。関経連の森詳介会長(当時)は「大阪湾岸の一体開発につながる」として万博とIR誘致を支持する方針に転換した。松本会長は昨年5月の就任当初から、「IRは経済効果があり、やるべきだ」と支持を鮮明にしている。

 大商はIR誘致を受け入れる方針を打ちだしつつ、会員に中小企業を多く抱えることもあり慎重な見方が根強い。20日の会見では「中堅・中小企業にも好影響があるように進めてほしい」(東和浩副会頭)、「カジノには反対だが、いかにマイナスを少なくしてプラスを大きくするかを考えざるを得ない」(西村貞一副会頭)との声が上がった。大阪版IRの具体化をめぐっては今後、経済界の間で議論を深めることも必要だ。



産経WEST 2018.7.21 10:10
http://www.sankei.com/west/news/180721/wst1807210026-n1.html