https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180723-00000500-san-soci

栃木県那須町芦野に古くからの観光名所がある。平安時代末期〜鎌倉時代初期の僧侶・歌人、西行(1118〜1190)
が詠んだ「道のべに清水流るる柳かげしばしとてこそ立ちどまりつれ」の舞台とされる遊行(ゆぎょう)柳だ。

奥州街道の宿駅として栄えた同地で多くの人が訪れ、能楽や謡曲の題材として取り上げられてきた。
江戸時代の俳人、松尾芭蕉(1644〜1694)も元禄2(1689)年、この地を訪れた感慨を「田一枚植えて立ち去る柳かな」
と詠んだ名木だ。平成27年には、国指定名勝「おくのほそ道の風景地」に追加指定されている。

この遊行柳の景色が今年、一変する事態となっている。柳にガの幼虫が異常発生し、葉のほとんどが食べられているのだ。
観光への影響も出始めており、那須町では対策の検討を始めた。

地元住民によると、ガの幼虫による葉の食害は昨年から急増した。特に、今年は異常発生し、6月中旬までには
葉脈を残してほとんどの葉が食べ尽くされた。その後、幼虫は地上に落下。石灯籠などに集まり、その多さに驚いて、
「気持ち悪い」と近付けずに帰っていった観光客も多かったという。

地元から連絡を受けた那須町では薬剤散布などを検討したが、水田が隣接していることもあり、断念。
地元住民とともに幼虫を駆除し、処分した幼虫は一日で約1000匹。駆除にあたった住民は「全体の数は想像もつかないが、
少なくても数千匹はいた」と話している。

また、昆虫に詳しい那須野が原博物館(栃木県那須塩原市)の多和田潤治学芸員は住民が撮影した写真から
「ウチスズメの幼虫ではないか」と推定している。

幼虫のほとんどは駆除されたが、取り逃がした幼虫がサナギ状態になったものも目立ち、住民らは「観光客もがっかりし、
『ちゃんと管理しているのか』との声もある。このまま放置すれば、来年はさらに被害が拡大する可能性もある」と対策を求めている。

那須町は「今後は地元と連携しながら駆除のタイミングなどを考え、早めの対策を取っていきたい」と話しているが、
かつてこの地を訪れた松尾芭蕉を思い、胸を痛めている関係者も多いという。


ガの幼虫に葉を食べ尽くされてしまった遊行柳=7月8日、栃木県那須町芦野
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20180723-00000500-san-000-view.jpg";