本件(東京高判平30・8・3)では、取調べを録音録画した媒体に記録された被告人の自白における
供述態度を「犯罪事実(要証事実)の存否を証明するための証拠」(実質証拠)として用いることが
できるか否かが問題となった。

第一審判決では上記により犯罪事実を認定していたところ、本件を扱う東京高裁第5刑事部の
別件(東京高判平28・8・10)での判示がこれを否定する趣旨のものであったことから、本件でも
これを否定することが予想されており、実際にもこれを否定する旨の判断をしている。

ただし、本件では、上記の点の法令違反および事実誤認により原判決を破棄するとともに、間接証拠
(情況証拠)を総合することによって被告人の犯罪事実を認定し、自判して有罪(無期懲役)としている。

なお、取調べを録音録画した記録媒体を実質証拠として用いたことに法令適用の誤りは
ないとした事例(東京高裁第3刑事部)がある(東京高判平30・4・25)。