約1300年前の製鉄拠点跡とみられる犬塚遺跡周辺(2015年3月撮影、宮城県山元町提供)
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 宮城県山元町坂元の「犬塚遺跡」の埋蔵場所から東日本大震災の復興工事用の土砂を採取している滋賀県守山市の建設会社が、遺跡発掘調査費の負担を一部拒否したのは不当だとして、町が同社に対し、町への調査委託契約を新たに締結する意思表示と、調査費約3550万円の支払いを求める訴えを仙台地裁に起こしたことが10日、分かった。

 訴えによると、遺跡は飛鳥、奈良時代の製鉄拠点跡とされ、敷地は約6万平方メートル。震災後のJR常磐線の移設工事時に見つかり、同社の土砂採取工事の届け出を受けて2014年8月、宮城県教委による試掘調査が行われた。

 県教委は土砂採取工事で遺跡の破壊が予想されるとして、記録保存のため文化財保護法に基づく発掘調査を同社に指示。同社は14年12月、調査業務を町に委託し、費用を負担する内容の任意契約を町と締結した。現地発掘は16年3月までに完了し、遺跡埋蔵場所は全て同社に引き渡された。

 同社は現地発掘費など計約4800万円を負担したが、出土品整理や報告書作成費など約3550万円を負担する16年度分の新規委託契約は「額が大きすぎる」として、16年7月に締結を拒否。その後、解決金500万円を支払うと町に申し出たものの、交渉は折り合わなかった。

 文化財保護法には発掘調査の費用負担に関する明文規定がない。遺跡を管轄する自治体が開発工事による遺跡の破壊を認める代わりに、行政指導の形で工事業者側に自治体が実施する調査の費用負担を求め、任意契約を結んで支払ってもらうのが文化財行政の慣行という。

 町は「発掘調査は報告書作成までが業務。同社には町に業務を委託し、費用を負担する信義則上の義務がある」と主張。同社は取材に「現時点でのコメントは控える。具体的な主張は裁判の中で明らかにする」と話した。

河北新報 2018年08月11日
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