戦没者遺骨 “日本人の遺骨なし” 鑑定結果を公表せず 厚労省
2018年8月16日 19時11分 NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180816/k10011579741000.html

太平洋戦争で戦死した日本兵の遺骨としてフィリピンで収集され、現地に保管されていた遺骨について、厚生労働省から7年前にDNA鑑定を委託された2人の専門家が「日本人と見られる遺骨は1つもなかった」とする鑑定結果をまとめていたことがNHKの取材でわかりました。
この鑑定をした専門家の1人は「多くのフィリピン人の遺骨が日本兵のものとして帰還した可能性がある」と指摘していますが、厚生労働省はこの鑑定結果を現在まで公表していません。

フィリピンで戦死した日本兵の遺骨収集事業について、厚生労働省は平成21年度以降、日本のNPO法人に委託して進めていましたが、遺骨の中にフィリピン人のものが混入している疑いが指摘され、平成22年に中断されました。

厚生労働省は現地で保管されていた合わせて311の遺骨を3つに分けて、3人の専門家にDNA鑑定を委託し、平成23年10月、このうち1人が行った鑑定結果を基に「フィリピン人と見られる遺骨が半数近く混入していたが、日本人と見られる遺骨も含まれていた」などとする検証報告書を公表しました。

しかし、報告書の公表後、残りの2人の専門家が「判別できた遺骨のほとんどがフィリピン人と見られ、日本人と見られるものは1つもなかった」とする鑑定結果をまとめていたことがNHKの取材でわかりました。

NHKが入手した鑑定結果によりますと、専門家の1人は、鑑定した71の遺骨のうちタイプが判別できた遺骨のほとんどがフィリピン人と見られ、日本人と見られるものは1つもなかったとしているほか、もう1人の専門家も110の遺骨のうち日本人と見られるものは1つもなかったとしています。

厚生労働省は、ことし5月にフィリピンでの遺骨収集事業を8年ぶりに再開すると発表しましたが、2人の鑑定結果は現在まで公表せず、同じNPOが収集しすでに日本に帰還している遺骨については、現地の証明書が発行されていることなどを理由に、「フィリピン人のものが混入している事実は認められない」と説明していました。

鑑定を行った1人の山梨大学の安達登教授は「厚生労働省は一部の鑑定結果しか公表せず、意図的な情報操作と受け取られてもしかたがない。鑑定結果からはね多くのフィリピン人の遺骨が日本兵として帰還した可能性があると言わざるをえず、厚生労働省は説明する必要がある」と指摘しています。

厚生労働省は「検証報告書を公表した時点で、ほかの2人の鑑定結果はまとまっていなかった。日本人と見られる遺骨があったという事実に変わりはなく、隠していたわけではない」としています。