https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-45042017

オメガ3サプリは「心臓病予防にならない」=国際研究
2018年08月17日

魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸のサプリメントに心臓病を予防する効果があるという根拠は、良く言っても疑わしい――。医療に関する研究を評価する国際組織「コクラン」からこんな評価が出された。

コクランによると、10万人以上を対象とした臨床試験を検討した結果、サプリメントによる効果は根拠に乏しいことが明らかになった。

オメガ3サプリメントを摂取することから有意な効果が見られる確率は1000分の1だという。
一方で、健康維持のために、脂の多い魚を食生活に取り入れることは推奨している。
コクランによる研究は主に、魚を食べることで摂取されるオメガ3脂肪酸ではなく、サプリメントについて行われている。専門家らは依然として、魚を食べるのは心臓や健康全般に良いことだと考えている。

英国民保健サービス(NHS)は、「良い」脂肪を摂取するため、1週間に2回は魚を食べるようにし、そのうち1回はサーモンや新鮮なマグロやサバといった脂の多い魚にすべきだとしている。

オメガ3脂肪酸とは?

オメガ3脂肪酸には、複数の種類の油分が含まれる。
アルファリノレン酸(ALA)は体内で作ることができないが、植物油やナッツ、種に含まれている
エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)は、体内でALAから作り出されるが、脂の多い魚や、タラ肝油など魚油にも含まれている
牛乳やヨーグルト、パン、スプレッドの一部製品には、オメガ3が添加されたものもある。これらは通常、ALAが添加されている場合が多い。

しかし魚油を使ったサプリメントについて、コクランの研究の筆頭著者を務めたイーストアングリア大学のリー・ホッパー博士は、「長鎖オメガ3のサプリメントが心臓を守るという一般的な見方に反する内容の、今回得られた知見には自信を持っている」と語った。

「この大規模で組織的な研究には、何千もの人々の長期間にわたる情報が含まれる。これらの情報をもってしても、(心臓を)保護する効果は確認できなかった」
「今回の研究は、(魚油やEPA、DHAといった)長鎖オメガ3サプリメントの摂取が心臓の健康に役立ったり、脳卒中やあらゆる原因による死のリスクを低下させたりする効果はないと示す、良い証拠になった」

ホッパー博士はまた、「非常に信頼度の高い複数の研究では、長鎖オメガ3が心臓血管の健康に与えるメリットはわずか、あるいはほぼない、ということが一貫して示されている」と述べた。

一部の魚には、大量に摂取すると体に害を及ぼす可能性のある物質が少量含まれている。
サメやマカジキ、メカジキには微量の水銀が含まれている可能性があり、妊娠していたり妊娠を計画している女性や、16歳以下の子供は食べないようにするべきだという。
これにあたらない場合は、当該の魚の摂取量を1週間あたり1回分までにするのが望ましい。

キングズ・コレッジ・ロンドンの栄養学専門家で、慈善団体「ハートUK」の名誉ディレクターを務めるトム・サンダース教授は、「現在の栄養ガイドラインでは、循環器疾患の予防のためにサプリメントよりも魚を食べることが推奨されている。今回の研究では、ガイドラインが変更されるべき証拠は示されなかった。

野菜購入にお金を使うべき

シェフィールド大学の心臓専門医、ティム・チコ教授は、「NHSは以前、心筋梗塞を患った人たちに(オメガ3サプリメントを)処方していたが、何年か前にやめている。これらのサプリメントは費用がかかる。心臓病リスクの予防を期待してサプリメントを購入している人々への私のアドバイスは、そのお金を野菜を買うことに使いなさい、というものだ」と語った。

健康・食べ物・サプリメント情報サービスのケリー・ラクストン博士は、オメガ3脂肪酸に関する初期の研究では、心臓を守る効果が認められたが、特に薬を飲んでいる高齢者たちの、食生活の変更による緩やかな影響を確認するのは簡単ではなかったと指摘した。

ラクストン博士は、「サバやサーモン、ニシンを食べない人々にとって、毎日に魚油サプリメントを摂ることは、推奨に従う上で有効だと」と語った。さらに、「オメガ3は目や免疫機能、脳の健康維持にとっても役立つ。従って心臓だけに注目すべきでない」と指摘した。

(英語記事 Fish oil supplements for a healthy heart 'nonsense')