2018年8月19日 17時08分

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iPS細胞使った臨床研究申請 血液の難病患者に 京大
2018年8月19日 17時08分

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iPS細胞から作った血液の成分を難病の患者に投与して症状を改善させる初めての臨床研究を京都大学が国に申請し、近く審議がはじまることがわかりました。対象となるのは拒絶反応を起こしやすい体質のため輸血ができない患者で、iPS細胞の特性をいかした臨床研究として注目されます。

この病気は「再生不良性貧血」と呼ばれる血液の難病で、血液の成分である血小板などが少なくなって体内で出血が起きやすくなります。一般的に血小板を輸血して補うなどの治療が行われますが、拒絶反応を起こしやすい体質の一部の患者では輸血することができません。

こうした中、京都大学医学部附属病院の高折晃史教授と京都大学iPS細胞研究所の江藤浩之教授のグループは、「再生不良性貧血」で拒絶反応を起こしやすい体質の患者を対象にiPS細胞を使った臨床研究を国に申請したことがわかりました。

対象となる患者は1人で、患者の血液から作ったiPS細胞を元に血小板を大量に作り、3回にわたって徐々に量を増やしながら投与して安全性と効果を確認します。

患者自身から作ったiPS細胞を使うため拒絶反応はほとんどないと考えられるということで、グループではiPS細胞の特性をいかした臨床研究だとしています。国は近く審議をはじめ、グループは了承されれば今年度中に患者への投与を始めたいとしています。

課題は血小板の安全性
今回の臨床研究は「再生不良性貧血」という難病でしかも特殊な体質の患者1人を対象に行います。

再生不良性貧血は、骨髄の中にある造血幹細胞という、血液の成分や血球を作り出す細胞が働かなくなることで起こります。

血液中の血小板などの数が少なくなって出血しやすくなり、重症化すると脳などでも出血を起こす危険性が高まるため、血小板の輸血をするなどして症状の改善を図る治療が行われます。

ところが、今回の臨床研究の対象となる患者は拒絶反応が起きやすい体質があり、血小板の輸血を受けることができません。

京都大学のグループは患者自身の血液から作ったiPS細胞を元に血小板を作り出し、3回にわけて徐々に量を増やしながら投与する計画で、最も量が多い3回目には血小板およそ1000億個を投与して安全性と効果を検証します。

グループでは、拒絶反応が起きにくい患者自身の細胞から作り出すことができるiPS細胞の特性を生かした臨床研究としてこれまでにないものだとしています。

課題は投与した血小板の安全性です。

血小板は血液を固める成分なので適切に機能しないと血管を詰まらせる原因にもなるため、血液の中で正常に機能するか安全性を十分に確認することが必要になります。
「拒絶反応起きにくい」iPS細胞の特性生かす
iPS細胞を使った再生医療の臨床応用は、4年前から神戸市にある理化学研究所などのグループが、重い目の病気の6人の患者に対して臨床研究を行っています。

目はヒトの組織や臓器の中でも拒絶反応が比較的起きにくいとされていて、iPS細胞は患者自身の細胞だけでなく他人の細胞から作ったものも使われました。

その後、重い心臓病や難病のパーキンソン病の臨床応用も続いていますが、計画ではいずれも他人の細胞から作ったiPS細胞を使うことにしています。

他人の細胞から作ったiPS細胞は事前に必要な検査を行って備蓄されていて、患者本人からiPS細胞を作る場合に比べてコストを抑えることができるほか、治療を開始するまでの時間も短くすることができます。

しかし本人の細胞ではないため、移植した際に起きる免疫による拒絶反応を薬などで抑える必要があるほか、拒絶反応が起きやすい状況では薬でも完全に抑えることは難しいとされています。

今回の臨床研究では、対象となる患者は拒絶反応を起こしやすい体質のため、拒絶反応が起きにくい患者自身の細胞から作ったiPS細胞を使う計画で、iPS細胞の特性をいかしたものになっています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180819/k10011582281000.html