大阪府警富田林署の面会室から、樋田淳也容疑者(30)が逃走して1週間が経過した。

 面会室を遮る、アクリル板を外して外に出て逃走した樋田容疑者。

 途中、赤い自転車、黒いミニバイクを盗み、ひったくり事件を複数、起こしながら逃走中とみられる。

 前代未聞の不祥事に大阪府警は、3000人体制で樋田容疑者の行方を追いかけている。

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 大阪府警が本部長名で謝罪したのは、同15日と逃走から3日も経過していたこともあり、府民の不信感は増幅している。

 大阪府警は、樋田容疑者の顔写真だけでなく、歩く姿の動画、似顔絵、ウサギに小判をあしらった刺青まで、公開して情報提供を求めている。

「樋田容疑者は、窃盗容疑などでも逮捕されて富田林署に留置されていた。

 逃走後、黒いミニバイクでひったくり事件が大阪市生野区など複数で起きている。

 その手口は、手袋をして指紋の残さないなど、これまでの樋田容疑者とそっくりだ。その犯人が樋田容疑者であるなら、現金で4万円近くを手に入れたことになる。それが逃走資金になっているとされる」(捜査関係者)

 樋田容疑者は、逃走した富田林署の富田林市だけでなく赤い自転車は隣の羽曳野市で発見。

 黒いミニバイクを盗んだのは、実家近くの松原市、ひったくりは大阪市内と広範囲を自由に動いているとみられる。

 樋田容疑者、大阪府松原市の出身。小学校、中学校の同級生はこう話す。

「昔は活発なヤツで、よく魚釣りしたり、虫取りに行ったりした。高校時代から、おかしくなって、悪い仲間と付き合いはじめ、実家近くをパトカーで追いかけられたり、事件を起こすようになった。その後、警察のお世話になるようなことがあったそうで、親が『どうしてこんなことに…』と嘆いていた」

 樋田容疑者は複数回、警察のやっかいになった過去があるようだ。

 留置場で樋田容疑者と一緒になったことがある男性はこう証言する。

「確か、窃盗容疑で捕まっていた。すごく調子がいいヤツで、刑務官にもハイと返事もいいんですよ。けど、実際に何かやるとなると、人の話をまったく聞いていない。常に髪をいじったり、指をまげて鳴らしたり、いつもイライラした様子で、落ち着きがないヤツでした」

 そしてこうも続ける。

「脱走、樋田と聞いた時に、あいつかとすぐにピンときましたよ。同じ留置場にいた時に、小さい窓があったのですが『ダイエットしたら、窓の隙間から外に出れるかな』『拘置所に移送される時ってトイレに行き逃げる機会があるか』『病気のふりして、外部で医者に診てもらったら逃げれるかな』とか言ってました。もちろん冗談だとおもって聞き流しましたが、マンガのルパン3世が好きなようで、『ルパンみたいに脱獄したらすごいでしょうね』とか言ってました。脱走願望を持っていたようですが、まさか本当にやるとは思わず、驚くばかりです。脱走後の自転車やバイクを盗み、ひったくと用意周到に計画していたんじゃないですか」

 そんな樋田容疑者を大阪府警は、お盆返上で追いかけている。

 大阪の駅やコンビニなど、あちこちで樋田容疑者の「手配書」が貼られている。

 さらに立ち寄りそうなホテル、商店などに直接、協力を依頼する人海戦術も展開。

 だが、いずれも不発に終わっている。

「通報はよくあります。阪急電車のある駅で、帽子をかぶってマスクをしている男が怪しいと通報があり、駆け付けたらまったく別人。高槻市や大阪市、枚方市、もう数えきれないほど目撃情報はありますが、当たりはない。帽子にマスク姿だけで怪しいという通報もあります」(別の捜査関係者)

 実際に、パトカーで警戒に当たっている警官は、こう苦笑する。

「上の方から『なんとしても捕まえろ』『ガッツで捕まえろ』とすごいハッパはかかっているのですが、いかんせん精神論ばかりで、肝心の情報がない。赤い自転車と黒いミニバイクを盗んだとなっている。夜、警戒していて赤い自転車、黒いミニバイクを見たら、全部、怪しく見えてしまう。夢にまで、赤い自転車と黒いミニバイクが出てきますよ。市民から、山口県で行方不明になった2歳児を発見した、尾畠(春夫)さんにお願いしろと言われても黙って聞くしかなかった」

 果たして大阪府警は樋田容疑者を無事、確保できるのか?(今西憲之)

2018.8.19 17:49dot
https://dot.asahi.com/dot/2018081900015.html?page=1