寄付者の名前は「佐清(すけきよ)」――。名探偵金田一耕助ファンの「聖地」として知られる岡山県倉敷市真備町に、小説の登場人物の名前を借りた寄付が続々と寄せられている。7月の西日本豪雨で金田一のイベント用の衣装などが浸水。地元有志が修復費用の寄付を呼びかけたところ、遊び心あふれた支援の輪が広がっている。

 倉敷市真備町は、ミステリー小説の巨匠・横溝正史(1902〜81)が戦中から疎開して戦後も生活。金田一シリーズを書き始めた場所として知られる。「佐清」とは、映画化され大ヒットした「犬神家の一族」でマスク姿が印象的な登場人物だ。

 金田一ゆかりの地となった真備町では毎年11月、コスプレイベント「1000人の金田一耕助」を開催。ファンが金田一や登場人物になりきって「聖地」を歩くのが恒例だったが、西日本豪雨で真備公民館岡田分館に置いてあった地元有志が寸劇などで使う衣装やゲタ、看板など約50点が泥水につかり、補修が必要になるなどした。

 ボランティアでイベントの運営に参加する「岡田地区まちづくり推進協議会」の川崎修さん(39)がツイッターで復興資金を募ったところ、振込先の「名探偵のふるさと募金」の口座に「金田一耕助」「犬神佐兵衛」「磯川常次郎」「田治見要蔵」ら小説の登場人物のほか、「江戸川乱歩」「アガサ・クリスティー」ら推理小説の巨匠名義の寄付が相次いだ。

 中には「母さん僕だよ佐清だよ」「佐清その頭巾を取っておやり」「祟(たた)りじゃー」など、小説や映画のセリフを意識したとみられる名義も。8月17日時点で、400人以上から210万円の寄付が集まったという。

 「金田一ファンのつながりを感じることができた。災害でつらいときこそ、笑顔になれるような話題が重要。生活の復興が最優先だが、できる限り早くイベントを復活させたい」と川崎さん。市立真備図書館にあった横溝正史の書籍約800冊も浸水で読めなくなるなどしたため、倉敷市に寄付金の一部を寄付して書籍等を購入してもらう予定。寄付の振込先は「(ソースに記載)」。川崎さんのツイッターアカウント「@osm4」で寄付の最新状況も発信している。(榧場勇太)

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