<徳島バス事故>1年後も遺族や生徒らの心の傷は癒えず
8/26(日) 9:21配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180826-00000010-mai-soci

 徳島県鳴門市の徳島自動車道で、停車していたマイクロバスに大型トラックが追突し、徳島県立富岡西高1年の森下汐音(しおん)さん(当時15)とバス運転手の岡本勉さん(同30)が死亡、14人が負傷した事故から25日で1年となった。遺族やバスに乗っていた生徒たちの心の傷が癒えることはない。事故を受け、県警や関係機関は再発防止に向けた取り組みを進めている。【岩本桜、松山文音】

 当時、バスに乗り合わせた女子高校生は一時、意識不明となったが、日常生活を送れるようになった。「事故当時のことは思い出せない。だが汐音が忘れられない。日常の些細な時でも汐音のことを思い出す」と友人を悼んだ。家族は「本人は前を向いて学校生活を送っています。でも(事故は)心に残り続け、触れたくない部分もあると思います」と目頭をおさえた。

 事故現場には24日、NEXCO西日本が献花台を設置。25日朝から、生徒の学校関係者や近所の人が花を手向け、手を合わせた。

 富岡西高の当時の森下さんの担任は悲痛な思いからなかなか現場に来ることができず、この日初めて訪れた。「この1年、1日も忘れることはなかった。森下さんはいつも笑っててすごく優しく、本当に良い子だった。安らかにお眠りくださいと伝えた」と涙を浮かべた。横井祥人教頭は「生徒たちの心の傷はまだ癒えないと思う。生徒は前向きに頑張っているのでそれを支えたい」と語った。事故直後、県警に通報した近くに住む松浦裕子さん(33)は「この場所を通る度に子供たちも手を合わせることが日課になった。今も大きい音がするとびっくりするし、あの時の状況が忘れられない」と沈痛な表情で話した。

 また、バスを運転していた岡本さんの妻は「1年経った今でもあの時のことを思い出さない日は1日もありません。残された子供と2人、主人の思いを背負って精いっぱい生きていきたいと思います」と弁護士を通じてコメントした。バスを運行していた阿波中央バス(阿波市)は「バスに乗車されていた大切なお客様やご家族の皆様の人生を大きく変えてしまったことを思うと、ただただお詫びの気持ちしかありません。亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます」としている。

 事故は昨年8月25日夕発生し、神戸市内の専門学校であったオープンキャンパスに参加した高校生らが巻き込まれた。高校生らが乗ったバスがエンジントラブルで路肩に停車していたところ、トラックが追突。弾みでバスは道路左側のガードレールを突き破り、数メートル下ののり面に転落し横倒しになった。トラックを運転していた菊池誉司受刑者(51)は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で禁錮4年の実刑判決を受けた。

 ◇再発防止に向けて

 事故では、車両故障で路肩に停車していたバスが、三角停止表示板や発煙筒を使用していなかったことも指摘された。再発防止に向け、継続した啓発活動が必要となる。

 今月10日、吉野川ハイウエーオアシス(東みよし町足代)で県や県警などが大型バス6台を止めて、三角停止表示板の設置状況を調べるキャンペーンを実施した。運転手全員がバス事故のことを認識していたが、三角停止表示板の収納場所を知らない運転手もいた。県警高速隊の梅口昌明副隊長は「バス会社によって対応に温度差がある。県警とバス会社や運送会社などが一体となった取り組みが必要」と強調する。

 県警は事故後、運転免許センターで大型バス運転手に高速道路でのトラブル時の対応について周知したり、配付チラシの注意事項に「高速道路利用時の交通事故防止に努める」といった項目を追加。運転手の意識にも少しずつ変化も見え始めた。県内の今年の高速道路での事故は7月末現在で2件と昨年同期比で5件減った。徳島トヨタ自動車本店(徳島市)によると、年間1、2本しか売れなかった三角停止表示板が事故後は10本以上売れているという。