https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-08-28/PE5SPE6K50Y601
→最高値更新の米S&P500種指数、TOPIX騰落率なおマイナス
→トランプ減税や日銀変心リスクも影響、「安倍3選」再評価の鍵に

史上最高値を更新する米国株に対し、日本株の年初来騰落率は依然マイナスのままだ。
両者の差が埋まらないのは日本株の売買代金シェアで7割以上を占める海外投資家の姿勢が影響しており、8月までの累計売越額は
過去2番目の高水準にある。

  東京証券取引所の投資部門別売買状況によると、2018年年初から8月3週までの海外勢による日本株現物の売買額は差し引き3兆8511億円の売り越し。
統計を開始した1982年以降ではリーマンショックの08年を抜き、世界的に株価が急落したブラックマンデー(暗黒の月曜日)の87年に記録した
7兆1928億円に次ぐ売越額だ。
東証1部全体の値動きを示すTOPIXの年初来パフォーマンスは、28日時点でマイナス4.7%。プラス8%超の米S&P500種株価指数に対する劣勢が顕著で、
主要国ではフランスやドイツにも負けている。

 日興アセットマネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、ジョン・ベイル氏は海外勢の日本株売りについて
「当初北朝鮮の好戦的な態度に関係していた公算が大きいが、米国投資家に関して言えば、力強い経済と減税に関連し、米企業業績が
急速に伸びるとの期待を受けた自国回帰の傾向もかなりあった」とみている。

 JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳グローバル・マーケット・ストラテジストは、
「米国市場で『FANG』などIT銘柄が強い中、日本は相対的にバリュー銘柄が多く、世界的にグロース先行で足が遠のいた」と分析。
また、日本株は中国の影響を受けやすい銘柄が時価総額の上位を占めており、「中国の景気鈍化を背景に米国株に買い安心感があった」と話す。

■日米景況格差、日銀の政策変更意識も
 米国の4ー6月期実質国内総生産(GDP)は年率換算で前期比4.1%増と4年ぶりの高い伸びを記録。
トランプ大統領による減税政策の効果を受け、個人消費などが良好だった。
日本の4ー6月期GDPも1.9%増と2期ぶりにプラス成長となったが、米成長率の高さには及ばない。
米国が各国に対し保護主義的な貿易政策を打ち出す中、企業の1株当たり利益の予想伸び率(向こう12カ月)も米S&P500種の22%に対し、
TOPIXは2%にとどまる。

 海外勢の間には、米国や欧州の中央銀行が金融引き締め方向にかじを切る中、異次元金融緩和を続ける日本銀行の政策変更リスクを
気にし始める向きもあった。ジェフリーズのチーフ株式ストラテジスト、ショーン・ダービー氏(香港在勤)は
「日銀は必ずしも認めていないが、市場は政策が変わりつつあると感じている」と言う。

 日銀は7月31日の金融政策決定会合で、長期金利の変動幅拡大を容認し、年間約6兆円としている指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れについては
銘柄配分を見直すとともに、市場状況に応じ買い入れ額は上下に変動し得るとした。

 一方、日興アセットのベイル氏は、海外勢が日本株買いに転じるには「世界的な貿易戦争を巡る懸念の後退や一段と高い配当性向、
19年の消費税率引き上げでも日本経済の急変を回避できるという確信などが必要」とみている。
JPモルガンの重見氏は、米中貿易摩擦の懸念後退に加え、「自民党総裁選で安倍晋三首相の3選という政治イベントをこなしていけるかどうか」に注目。
米国株の最高値更新など世界的に株式投資へのセンチメントが上向いている波に乗っていければ、
「日本株を避ける理由はなく、海外投資家は戻ってくる」と予想した。