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2018年8月31日 / 08:21 / 11時間前更新

悪循環に陥るアルゼンチン、市場経済派大統領を窮地に
Martin Langfield
[ニューヨーク 30日 ロイター BREAKINGVIEWS] - アルゼンチンの市場経済派の旗手であるマクリ大統領は、2015年12月に政権の座に就いてからずっと同国の長期的繁栄に適った政策を進めてきた。しかし今、あと一歩で破滅する状態に追い詰められている。

歯止めのかからないインフレや干ばつ、投資家心理の悪化が、マクリ氏が取り組んできた経済再生計画を危機にさらしている。

新興市場国経済への懸念を強めた投資家がアルゼンチンペソに売りを浴びせたため、マクリ氏は5月に国際通貨基金(IMF)に支援を要請。IMFは財政引き締め策の導入を条件に500億ドルの融資枠を与えることを約束した。しかし既にこの支援では十分ではないようだ。

マクリ氏は29日夜、IMFに融資の早期実施を求めていると述べて国民に安心感を与えようとしたが、むしろ同国が債務を返済できないのではないかとの投資家の不安を煽り、逆効果になった。中央銀行は30日に主要政策金利を45%から60%に引き上げたが、これもまた効果がなかった。ペソは15%以上下落し、アルゼンチンはこれほど高い金利には耐えられないという投資家の認識が浮き彫りになった。

ペソの下げ幅が大きくなるほど、アルゼンチンは外貨建て債務の返済が困難になる。昨年のドル建て100年債の発行も、堅実な政策というよりも自信過剰な行動に見えてくる。100年債の価格は今年に入って3分の1近く下落。利回りは3%ポイントほども上がって9.96%となった。

政府は30日、一段の財政引き締めを発表したが、インフラ支出などの景気刺激策が減り、エネルギー補助金の縮小や30%を超えるインフレに見舞われている有権者の痛みが一段と増して、問題はさらに悪化するだろう。

しかしペソを売る投資家は、自分が何を求めているのか注意した方がいい。持続不可能な財政支出やフェルナンデス前大統領の政策を見直す動きは、常に政治的な反発を招いてきた。今年の成長率が3%と予想されていたときには、汚職疑惑で支持率が落ちている野党・正義党(ペロン党)のフェルナンデス氏が来年10月の大統領選に出馬しても、人気の高いマクリ氏が勝つとみられていた。

ペソが急落し、今年の経済成長率が少なくとも1%のマイナスになりそうな今となっては、マクリ氏はフェルナンデス氏よりおとなしい正義党候補にすら勝てないかもしれない。

●背景となるニュース

・アルゼンチン中銀は30日、主要政策金利を45%から60%に引き上げた。インフレを抑制し、通貨ペソの下落に歯止めを掛けるため。ペニャ官房長官は、政府が財政引き締め策を加速させる手段を模索していると述べた。

・マクリ政権に対する投資家の信認は失墜し、ペソの対ドル相場が過去最安値を更新。国際通貨基金(IMF)は29日、500億ドルの融資の早期実施を求めるアルゼンチンからの要請について検討していることを明らかにした。