毎日新聞 2018年9月2日11時01分(最終更新 9月2日11時33分)

国の重要文化財・日本橋(東京都中央区)の上を通る首都高速道路の地下化について、2020年東京五輪・パラリンピック後の着工が決まった。
首都を代表する景観の再生に期待は高まるが、現場は都心の中枢。
各種ライフラインの機能を維持しながらの「前例のない複雑な工事」(関係者)が予想され、事業費3200億円の膨張を懸念する声が早くも出ている。【高橋昌紀】

「事業スキーム(枠組み)の微妙なバランスが求められる。技術的課題もある」。着工時期と事業費が決定した7月中旬の国の検討会で、委員から厳しい指摘があった。
工事は主に日本橋川周辺で実施されるが、地下にトンネルを掘削しつつ、地上では首都高の高架を補強する。複雑な工事になることは明らかで、委員の指摘は当然だったという。

国土交通省企画課によると、地下化区間は約1.2キロにとどまるが、
周辺は地下鉄3線(半蔵門、浅草、銀座)が通り、三越前駅がある。送配電や通信網、上下水道、ガス管などのインフラ関連設備も巡らされている。
振動などで影響を与えないよう、大型の円筒型掘削機(シールドマシン)の操作には相当な慎重さが求められる。

その地上部分では、日本橋川の上を通る首都高の高架の補強工事が行われる。地下化が終わるまで、現在の首都高の運用を続けるためだ。
補強工事は川の流量を減少させるため、川の拡幅工事も併せて行われる。これらの工事で発生した土砂の処分も必要となる。

一つ一つの工事自体は技術的に確立されているが、同課は「同時に進行する点で慎重さが求められる。効率性を維持するため、関係者間の調整がカギを握る」と説明。
都、首都高会社、東京メトロなどと綿密な調整を重ねていくと強調した。

都心部の地下トンネル工事では、台東区で1990年1月、東北・上越新幹線御徒町トンネル建設現場で地上の都道が陥没。工事ミスなどが原因とされた。
また2016年11月には福岡市のJR博多駅前の地下鉄延伸現場で、市道が陥没した。地下水の水圧にトンネルが耐えられなかったことが原因とされる。

建設業界のある幹部は「地下工事では想定外の地層などに遭遇し、事業費が膨らみがちだ。日本橋の工事でも本格的な地質調査などはこれからで、楽観は禁物」と指摘。
日本橋にある振興団体の幹部は、首都高地下化を歓迎しつつ「大規模な掘削が建物などに影響を与えないか、地元に心配する声はある」と打ち明けた。

上空を首都高に覆われた日本橋
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日本橋周辺の首都高地下化計画
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https://mainichi.jp/articles/20180902/k00/00e/040/175000c