福島県は、県農業総合センター畜産研究所(福島市)で飼育する「勝忠安福(かつだだやすふく)」を基幹種雄牛に認定した。肉質を示す数値は、研究所がこれまで飼育した78頭で最高を記録。東京電力福島第1原発事故の風評被害が残る「福島牛」の評価向上に期待が集まっている。
 勝忠安福は、交配で誕生した子23頭の検定で霜降りの度合いを示す脂肪交雑基準(BMS)値が平均8.8を記録。研究所で最高だった高百合(たかゆり)の8.4を更新した。枝肉重量520キロも福平晴(ふくひらはる)の518キロを上回り歴代1位となった。
 福島県古殿町で2012年6月に生まれた。父はオレイン酸が多い肉質で、母は霜降りの多さで知られていた。
 当時、県は原発事故で警戒区域に残された牛の対応に追われていたものの、研究所職員が優秀な血統を受け継ぐ子牛の誕生を聞きつけ、県が購入を決断。基幹種雄牛の生産に希望をつないだ。
 めざましい結果を見せたのは、17年9月に仙台市であった全国和牛能力共進会宮城大会だ。BMS値や枝肉重量などの総合評価で東日本1位(全体6位)と、高い肉質が評価された。
 県畜産課によると、福島県産の枝肉価格は原発事故の影響で全国平均と1キロ当たり200〜300円の差があり、1頭では10万〜15万円安い。
 勝忠安福の凍結精液の供給は間もなく始まる。畜産研究所肉畜科の石川雄治科長は「県産牛肉の風評を払拭(ふっしょく)するとともに、良質の子牛を生産し、福島の希望の星になってほしい」と話した。

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