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倒れた電柱、民家直撃バチバチ「恐ろしかった」
2018年9月5日 18時04分

 非常に強い勢力を保ち、四国から近畿に上陸した台風21号。和歌山県内でも、和歌山市で過去最大となる57・4メートルの最大瞬間風速を記録するなど各地で猛烈な風が吹き、8人が負傷、建物27棟(午後7時半現在)に被害が出た。停電も広範囲で続き、市民生活に大きな影響を引き起こした。和歌山地方気象台は5日も海上を中心に強い風が吹くと予報し、注意を呼びかけている。

 最大瞬間風速は和歌山市のほかに、白浜町(45・8メートル)、日高川町(42・2メートル)で過去最大に。1961年以来の更新となった和歌山市では、昼過ぎから立っていられないほどの暴風となり、街路樹の枝が折れたり、電柱が倒れたりした。

 和歌山市杭ノ瀬では、強風で倒れた電柱が民家に直撃。住人の男性は「窓から様子を確認し、目を疑った。電線が切れてバチバチという音もしていたので、外に逃げることもできず、恐ろしかった」と振り返った。

 関西電力によると、約19万軒(午後5時現在)が停電しており、交差点では手信号で交通整理を行う警察官の姿が見られた。

 和歌山市秋葉町の会社員女性(48)は、電池を買おうと近くのコンビニに向かったが、停電の影響で閉店。「携帯電話の充電もできないから、情報が集まらずに困っている。食事は済ませたので、今晩はとりあえずロウソクと懐中電灯を使って過ごす」と話していた。

 和歌山市西浜では、強風で窓ガラスが割れたり、倉庫の屋根が飛んだりする被害が出た。会社員男性(44)は、社内で作業をしていた午後1時30分頃、突然「パーン」という音がして近くの窓ガラスが割れ、猛烈な風が吹き込んだといい、「目の前でガラスが割れ、あわててベニヤ板で塞いだ。こんな経験は生まれて初めて」と振り返った。

 交通機関も大きく乱れた。JRは、紀勢線や和歌山線で終日運転を取りやめた。阪和線は朝は動いており、大阪方面に向かう最終電車が出発する際には、急いで駆け込む乗客の姿がみられた。

 出張で和歌山に来ていた東京都文京区の会社員男性(54)は「昨日の夜行バスで予定を早めて和歌山に入った。日帰りのつもりだったが、これでは1泊しないといけない。明日朝の東京での仕事に間に合うか不安だ」と話していた。

 徳島と和歌山を結ぶ「南海フェリー」は、終日欠航。5日も上下8便の欠航を決めた。南紀白浜空港では4日、羽田便3往復6便すべてが欠航となった。

 紀伊水害と同じ時期に襲来した台風21号。7年前に大きな被害を受けた県南部では、多くの人が避難所に身を寄せた。

 那智勝浦町市野々の町立市野々小には、3日夜から地域住民が多数避難してきた。男性(37)は、妻、子ども2人と訪れ、「紀伊水害では市野々の実家周辺が土砂に埋もれ、親が数日間孤立した。今回は風がかなり強かったので、早めの避難を決めた」と話していた。

 新宮市の市福祉センターにも、3日夜から続々と住民が避難。無職女性(78)は、近所の知人らと声を掛け合ってやって来たといい、「紀伊水害では床上40センチまで浸水したので、今回は日用品などをタンスの上に置いて出てきた。台風続きでしんどい」と疲れた表情で話した。

強風で倒れ、民家を直撃した電柱(4日午後5時35分、和歌山市杭ノ瀬で)
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強風で高波が押し寄せる海岸(4日午後1時35分、白浜町で)=尾崎孝撮影
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