スウェーデンのストックホルムでAFPの取材に応じるアミネ・カカバーベ議員(2018年9月7日撮影)
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スウェーデン・ストックホルムの投票所で総選挙の投票をする有権者ら(2018年9月9日撮影)
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スウェーデン・ストックホルムの投票所で総選挙の投票を済ませた男性(左、2018年9月9日撮影)
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【9月9日 AFP】9日投票のスウェーデン総選挙を前に、イラン系クルド人でクルド人治安部隊ペシュメルガ(Peshmerga)の戦闘員だった経歴を持つアミネ・カカバーベ(Amineh Kakabaveh)議員がAFPの取材に応じた。カカバーベ氏は、亡命希望の移民受け入れに対するスウェーデンの姿勢の「甘さ」が反移民を掲げる極右政党の台頭を招いたとの認識を示した。

 スウェーデンが2012年以降に受け入れた亡命希望者は40万人で、国民1人当たりで欧州最多となっている。特に15年は16万人も受け入れた。

 イランで死刑判決を言い渡されたカカバーベ氏は1992年にスウェーデンに逃れ、難民認定を受けた。08年からは国会議員を務め、亡命希望者の受け入れを厳しく批判。自身の所属政党である左翼党(Left Party)の内部から移民に汚名を着せていると非難されている。

 カカバーベ氏はスウェーデンが「ますます分断されている」とした上で、「わたしたちは甘かった。覚悟がなかったし、計画もなかった」と述べた。また、こうした状況が極右思想をあおる「原理主義」を郊外で台頭させている、と付け加えた。

 さらに同氏は「スウェーデンの(亡命希望者)受け入れをめぐる問題は20年前から続いている」と述べ、「だからこそ人種差別的なスウェーデン民主党(SD)が、現在第2党になりそうな勢いで支持を伸ばしている」と指摘した。

 選挙運動の終盤に行われた7つの世論調査の平均によると、1988年に元ネオナチによって設立されたSDの支持率は20%前後。ステファン・ロベーン(Stefan Lofven)首相の社会民主労働党(SAP)に迫り、保守派の中央党(Moderates Party)と互角の争いになっている。

「わたしは読み書きができない状態で入国した。6年後には大学生になり、ここ10年は国会議員を務めている」 と話したカカバーベ氏は、スウェーデンに幻想を持つことこそなくなったが、「人道大国」であることや寛容の精神を誇りとするスウェーデンが「可能性にあふれた国」であるとの認識は変えていない。

■脅迫受け情報機関の保護下で生活

 カカバーベ氏はスウェーデンで社会福祉の学位を取得。2005年にはフランスの女性の権利活動家グループ「Ni Putes Ni Soumises(娼婦でもなく従属物でもない)」のスウェーデン支部を立ち上げた。

 主に女性の解放に取り組んでいるカカバーベ氏は、未成年女子がイスラム教徒のヘッドスカーフをかぶることや宗教学校の禁止を訴えており、クルド人やアラブ人の社会にある「宗教過激主義」や「名誉を理由とした女性の抑圧」への強硬な反対活動で知られている。

 カカバーベ氏はスウェーデン国内で知名度が高い政治家とはいえないものの、「人種差別主義者や原理主義者」に脅迫され、テロ対策を担う情報機関SAPOの保護下で生活しているという。

 歯に衣着せぬ言動が災いし、カカバーベ氏は9日の総選挙で左翼党の候補者名簿に掲載されなかった。別の党から首都ストックホルムの選挙区に立候補したが、当選の可能性は低いと考えている。

 当選しなかったらどうするつもりかとの質問にカカバーベ氏はためらうことなく「何か別のことを」と答えた。「どこか別の国、あるいは別の大陸で抑圧された女性のための社会福祉活動をするかもしれません」 (c)AFP/Gaël BRANCHEREAU

2018年9月9日 16:48
http://www.afpbb.com/articles/-/3188970