非正規雇用の賃金上昇加速の可能性(ルイスの転換点は近い?)

過去5年間に生産年齢人口が5百万人近く減った中で、就業者数が2百万人以上増えたのは、やはり驚きと言うほかない。これは本書第7章が強調するように、女性や労働者の労働供給が極めて弾力的だったことを意味する。
裏を返せば、この女性・高齢者の弾力的な労働供給のおかげでパートやアルバイトの時給の上昇は前年比+2%程度で済んでいると考えることもできる。

そして大変興味深いのは、彼らが女性や高齢者の弾力的労働供給の臨界点を「ルイスの転換点」と呼んでいることだ。
周知のように「ルイスの転換点」とは、経済発展論において、(1)開発の初期には生産性の低い農村から生産性の高い都市へと弾力的に労働が移動するため、
大幅な賃金・物価の上昇を伴うことなく高成長が実現するが、(2)農村の余剰労働が枯渇すると労働移動が減少し、成長率が低下する一方で賃金・物価が上昇する、という転換点を指す。
この言葉を使うと、筆者の見方は女性や高齢者の弾力的労働供給は「ルイスの転換点に近づいている」ということになる。

『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』:書評と考察
http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/2017/2017-6-1.html