10月11日に豊洲新市場がオープンする。
2016年8月に小池百合子都知事が、新市場の土壌汚染問題を理由にオープンを延期して以来、実に2年の時を費やしてのお目見えだ。
これにあわせて築地市場も10月6日にその役割を終える。

■4日間で行われる大引越し事業

新市場がオープンする11日までに築地から豊洲への大引っ越し事業がスタートする。
東京都の説明によれば、約900の事業者が引っ越しを行い、2トントラックで5300台分、市場内での運搬車であるターレットやフォークリフト2600台もその対象になるという。

わずか4日間という短い日程ですべての業者が引っ越す「大事業」が展開されることになる。
さて、人や荷物が引っ越していく築地で置き去りにされる運命にあるのが市場に残ったネズミたちだ。
築地市場にどのくらいのネズミが生息しているかは明らかではないが、万単位のネズミが生息していると指摘する専門家もいる。

■あの手この手のネズミせん滅作戦

ネズミにとって市場は格好の住処だ。
魚の切り落としや油脂、水産加工品、果実の切れ端など大量に出るごみはネズミたちに十分満足できる生活環境を提供してきた。

特に市場に多いとされるのがドブネズミで、彼らは水に強く、水を大量に使う市場でも生きていけるという。
その住処が奪われるネズミたちが市場の引っ越しとともに、大量に築地から移動を始めることが危惧されている。

これに対して、市場側も出ていくネズミたちをせん滅しようと躍起になっている。
具体的には9月の2度の連休中と、10月10日から始まる建物解体工事に伴っての2回と、計4回にわたって累計4万枚の粘着シート、大量の殺鼠剤の散布、捕獲籠や配管内の防鼠ブラシなど、あの手この手を尽くして、市場からネズミを出さない作戦を繰り広げる。
市場を抜け出したネズミたちが築地やその隣にある日本を代表する繁華街銀座に逃げ込む可能性が高いからだ。

ネズミは予知能力が高いといわれる。
昔から沈没する船は出航前に船内にいたネズミたちが逃げ出すといわれた。

映画「タイタニック」でも満足顔で船に乗り込む乗客たちをしり目に大量のネズミたちがロープをつたって船から逃げだすシーンがある。
また地震が起こる前に、ネズミが動揺して逃げまわることも知られている。

市場の移転を予知したネズミたちはすでに移動を開始しているのかもしれない。
築地市場にいるネズミを一網打尽にできるかといえば担当者の意気込みとは裏腹におそらく無理難題というものだろう。

■新宿の超高層ビルにもネズミはいる

ネズミで思い出すのは、以前新宿の超高層ビルでビル管理の仕事をしていたときのできごとだ。
当時私は不動産会社に勤めていて、本社から異動を命じられ新宿の超高層ビルの管理業務を命じられた。
本社でオフィスビルの開発や運用はやってきたものの現場での管理業務は初めての体験だった。

着任早々、私のデスクの上には消毒会社からその月に定期的に実施されている「殺鼠殺虫報告書」が置かれていた。
内容を見ると「ネズミ60匹」を捕獲退治した旨の記載がある。
まさか超高層ビルでネズミが60匹も捕まるのかと不審に思った私は消毒会社の担当を呼び出し、

「あの、60匹も捕れたのですか。この数、普段はどうなんでしょうか」と聞くと、担当者は涼しい顔で「いや、ちょっと多めですかね。念のためもう一回やっておきましょうか」というので、「そうだね。じゃ頼みますよ」と再度の殺鼠殺虫をお願いした。

■「せん滅しようとしても無駄だ。躾けるのだ」

 数日後、消毒会社の担当者から受け取った報告書に記載されたネズミの数はなんと「57匹」。
まったく減っていない。心配になって上司に報告をすると、その上司はニコニコしながら驚くべき発言をした。
「ははは、だめだよそんなことしちゃ。何回やってもそんなに変わりゃしないよ。ネズミの数なんて」

びっくりする私に上司は続けた。
「あのね。ネズミを退治しようとしても無駄だ。この新宿の高層ビル群の下には人間よりも多くのネズミが生息している。
うちのビルで殺鼠剤を配管に流し込んでも奴らはあわてて逃げて地下を通って隣のビルに逃げ込むだけだ。
逃げ遅れた60匹くらいのバカなネズミが捕まるってことだ。
だから奴らはこの広大な新宿の地下を縦横無尽に走り回っているから、殺鼠剤をいくら撒いたってそんなもの消毒会社を儲けさせるだけだよ」

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http://bunshun.jp/articles/-/8911