https://www.cnn.co.jp/tech/35125652.html

欧州議会、新たな著作権ルールを承認 ネットが変わる可能性
2018.09.14 Fri posted at 14:31 JST


ロンドン(CNNMoney) 欧州連合(EU)の欧州議会は14日までに、インターネット上の著作権保護に関する新たな法案を可決、承認した。ネットIT大手はインターネットへの著作物の違法アップロードを防止し、著作者やミュージシャンと収益を分配するように迫られる可能性がある。

検索大手のグーグルや交流サイトのフェイスブックにとっては大きな後退となる。これらの企業は既に、個人データや好ましくないコンテンツの取り扱いでEUの規制当局から大きな圧力を受けている。

法案は最終的に欧州委員会と加盟国の承認も必要となる。ただ、この抜本的な改革案はネット大手企業に新たな費用負担を課し、アーティストやメディア企業にはより大きな力を与えるものとなっている。

法案に賛成するドイツの議員は「これは欧州の創造的な産業にとっていい兆候だ」と評価する。

支持派はこの法案がミュージシャンや映画制作者、メディアとIT大手の間のパワーバランスを回復するものだと主張する。一方で反対派は、インターネット上の「ミーム」(画像や文言などがコピーされユーモアなどを交えた様々なバリエーションとなって拡散していくもの)が消えたり、グーグルニュースが閉鎖されたりする可能性があると警鐘を鳴らす。

英サウザンプトン大学の著作権の専門家、エレオノラ・ロザティ氏は、最終的には法案の文言がどれだけ具体的か、そしてそれがどう解釈されるかで影響は変わってくると語る。「もし法律が明確でない場合、法律家にとってはうれしい状況だが、不確実性が生まれるため問題になる」「警告を発するのは正しいが、強すぎる」と警告する。

ミームの終わり?

最も激しい論争となったのは第13条だ。同条はユーザーが行った著作権違反行為について、ユーチューブなどのコンテンツ共有プラットフォームも有責とする。

そのため企業はユーザーが著作物の違法アップロードをしないようなフィルターを作る必要に迫られる。

反対派は、自動的なフィルターは検閲に相当し、表現の自由を害すると主張。海賊版の音楽や動画のストリーミングや共有の防止を目的とする規定が広すぎる規制になっていると指摘する。

法案に反対するドイツの別の議員は「あなたが発信したいものは全て、最初にフィルターからの承認を受ける必要がある」「パロディーやミームといった完全に合法なコンテンツもこの標的になってしまう」と危機感を募らせる。

フィルターを開発するコストも巨額となる。ユーチューブはこれまで違法著作物を特定するコンテンツのシステムに1億ドル以上をかけてきた。

ユーチューブは新法案に反対の立場を取る。同社の親会社グーグルは法案の可決後に、「人々はオンライン上で質の高いニュースとクリエイティブなコンテンツへのアクセスを求めている」「より多くのイノベーションやコラボレーションが、欧州のニュースやクリエーティブな分野の持続的な未来の達成に向けた最良の方法となる」との声明を出した。

アマゾンやイーベイ、パンドラなどが加盟するコンピューター通信産業協会も法案に反対している。フェイスブックはコメントを控えている。

「リンク税」

次に論争が激しかったのは第11条だ。グーグルニュースなどのサイトに対し、ニュースの配信者にコンテンツの抜粋表示の対価を支払うように義務付ける内容となっている。

賛成派は欧州でのメディアの多元的な共存を守ることになると主張するが、IT大手は猛烈に反対している。

グーグルは、このルールが検索やグーグルニュースを通じて ニュースの配信者にユーザーを送り届けるのを妨げる結果になると警告する。抜粋を表示するのに金銭を支払うのは誰にとっても有望なオプションとならないためだという。

前出の反対派の議員は、第11条は「壊滅的だ」と評した。
欧州では以前もニュース配信者が金銭を受け取れるような試みがあったが期待外れに終わった。スペインで同様の政策が行われたときは、グーグルがグーグルニュースを閉鎖する対応をとる結果となっていた。