警察官が警戒する中、事件現場に花を供える男性ら=神戸市長田区で(画像の一部を加工しています)
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 神戸市長田区五番町の路上で昨年9月、指定暴力団「任侠(にんきょう)山口組」(本部・尼崎市)代表の警護役が射殺された事件は12日で発生から1年が経過した。県警は、対立する指定暴力団「神戸山口組」(本部・淡路市)傘下の暴力団員、菱川龍己容疑者(42)を殺人と銃刀法違反の疑いで指名手配しているが、行方は分からないまま。周辺住民からは早期解決を願う声が聞かれる。

 ■逃走中

 事件は昨年9月12日午前10時5分ごろ発生。織田絆誠(よしのり)代表の車列に襲撃グループの乗用車が衝突、車外に出た織田代表の警護役の男性(当時44歳)が菱川容疑者と口論になった後、射殺された。

 発生4日後、神戸市北区の歩道で拳銃2丁と菱川容疑者の身分証が入ったかばんが見つかった。県警は菱川容疑者を指名手配し、一気に容疑者確保につながるかと思われた。

 しかし、捜査は難航。防犯カメラには菱川容疑者のほか、車列に近づく別の男が映っていたが、特定には至っていない。菱川容疑者の足取りもつかめず「死亡説」すらささやかれた。

 ■協力者浮上

 それから半年、捜査は急展開した。逃走の手助けをした人物が浮上したのだ。

 県警は今年3月、知人の女性(29)を犯人隠避の疑いで逮捕した。防犯カメラの映像などから、女性が事件現場から北東約1・2キロの同市兵庫区内で菱川容疑者を車に乗せ、同市北区や三木市内を走行していたことが判明した。しかし、女性は菱川容疑者の行方については話さなかった。結局、処分保留で釈放された。

 その後も目撃情報が複数寄せられた。今年5月には尼崎市の飲食店で「似た男がいる」との通報があり、防犯カメラの映像を調べたが、別人だった。捜査関係者は「菱川容疑者以外にも、事件に関係した人物が近くにいたはずだ」と話す。

 ■弱体化進むが

 一方、この間に、県警は暴力団の弱体化を着々と進めている。行政などが住民に代わって暴力団を訴える代理訴訟制度を活用し、神戸山口組と任侠山口組の両本部事務所の使用差し止めにこぎつけた。神戸と尼崎の歓楽街では「みかじめ料」(用心棒代)の取り締まりを強化している。

 そんな今だからこそ、長田事件の解決を望む地元の声は切実だ。

 事件現場では12日、多くの警察官が警戒する中、任侠山口組の関係者とみられる男性数人が花を供えた。捜査関係者によると、織田代表らは尼崎市の傘下組織事務所で男性を追悼したという。

 事件を目撃した女性は当時を思い出し、険しい表情で語る。「あの時の光景や発砲音を忘れることはない。暴力団追放運動が進む中で事件が起き、残念だ。毎月12日前後になると花を供える組関係者の姿がある。早く解決してほしい」

2018年9月13日
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