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2018年9月22日 / 02:00 / 7時間前更新
焦点:グリーンランドの巨大氷河崩壊、温暖化の謎に迫れるか
[グリーンランド 19日 ロイター] - グリーンランド東部上空を、過去数年と同じルートで飛ぶガルフストリーム機の中で、米航空宇宙局(NASA)の科学者たちは地表を見下ろし、レーダーを用いて氷の減少をマッピングしていく。

調査チームが世界最大の島であるグリーンランドの80%を覆う氷床上空で針路を定めると、デービッド・エリオット航空機関士が「チューブに入った」と宣言した。窓の外では、崩落した巨大な氷塊が、まるで塩の破片のように見える。

3月に行われたこのミッションは、NASAの「オーシャンズ・メルティング・グリーンランド(OMG)」プロジェクトの一環である。5年をかけて行われる3000万ドル(約34億円)規模の同プロジェクトは、温度の上昇した海水が氷床を下部から解かしていく様子を理解し、海面上昇の予測を改善することを目的としている。このテーマにおいては、これまでで最も野心的な調査である。

海面上昇は、世界各地の低地にある都市や島しょ、産業に脅威を与えている。だが、海面上昇の程度や速さに関する予測はバラバラである。理由の一端は、海水温の上昇を原因とする極地の氷床融解がどれくらいのペースで進行するのか、科学者にもはっきり分かっていないからだ。こうした曖昧さのため、各国政府・企業による対応も混乱し、気候変動に対する懐疑論に勢いを与えている。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書原案では、2100年までの海面上昇を33センチから1メートル33センチのあいだと予測している。IPCCによる前回2013年の報告では28─98センチとされていた幅が、さらに広がってしまった。

ロイターが確認したIPCCの予測は、これまでのところ報道されていない。

OMGの主任調査員ジョシュ・ウィリス氏によれば、これまで氷河に関する研究のほとんどは気温上昇による氷床融解に注目していたが、海水温の上昇も重要な役割を果たすという。

ウィリス氏は、気温上昇による氷河融解についてよく使われる比喩を引用しつつ、「ヘアドライヤーで氷を溶かすというだけではない」と言う。「温暖化する世界の中で、これらの氷床がどのように動くか、実はようやく理解され始めたところなのだ」

OMGプロジェクトでは、グリーンランド自体が海面上昇にどのように関与しているか明らかにすることを目指しているが、同時に、その知見を南極圏というはるかに広い地域に応用することも狙っている。

南極圏はグリーランドよりはるかに多くの氷を抱え、最終的に海面上昇においてもずっと大きな役割を果たす可能性があるからだ。そして、グリーンランドの氷のほとんどは海面よりも高い陸地にあるが、南極圏西部の氷床の大部分は海面以下であり、海水温上昇の影響を受けやすい。

NASAによれば、グリーンランドの氷の融解は現在、世界全体の海面を年間0.8ミリのペースで上昇させており、世界のどの地域よりも上昇値が高い。五輪競技用の水泳プールなら1億1500万面を満たすに足る水量である。

IPCCの研究に携わる科学者は、海面上昇の評価については現時点で最も権威があるとされるが、暫定的な調査結果についてコメントすることは控えた。
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