1カ月平均約60時間の残業をしたのに労働基準法に定められた残業代が支払われないのは違法だとして、県内の市立小学校に勤務する男性教諭(59)が25日、県を相手取り、約240万円の支払いを求めてさいたま地裁に提訴した。男性は同日、さいたま市内で記者会見し、「警察官も市役所職員も残業代が出るのに、教員だけ残業代ゼロで働かせるのはどうなのか」と提訴の理由を語った。

 公立学校の教員に対しては、教職員給与特別措置法(給特法)により、基本給の4%に当たる「教職調整額」が支払われる代わりに、時間外手当や休日手当は支給されない。正規の時間を超えて勤務させる場合は、校外実習や職員会議などの4項目に関する業務に限るとされている。

 訴状などによると、男性は昨年9月〜今年7月、4項目以外にテストの採点、授業の準備や評価などの事務作業で、1カ月に約40〜80時間の残業があったと主張。4項目に該当しない時間外労働には、教職調整額とは別に労基法に基づいて適正な賃金が支払われる必要があるとしている。

 代理人の若生直樹弁護士は「教員は恒常的な無賃労働を強いられている。きちんとした対価が支払われるべき」と話した。

 男性は37年間の勤務歴があり、「この10年ぐらいで教員の管理が強まり、仕事量が膨大になった。教師の自由度はなくなった」と指摘。自身は来年3月で定年だというが、「これを次の世代に引き継いではいけない。自分たちがどのぐらいの仕事を、どのぐらいの時間をかけてやっているか明らかにしたい」と述べた。

 県教委は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。

http://www.saitama-np.co.jp/news/2018/09/26/05.html