2018年9月29日 6時0分
東洋経済オンライン
今、大学で農学系の学部新設が相次いでいる。若い人、特に女性の間で食や農、環境に対する関心が高まり、農学部キャンパスではノケジョ(農学系女子)が大手を振って闊歩する。景気に左右されにくい食品産業への就職に、農学部卒が有利なことも人気を支える。

農学部に対する「偏見」が薄れてきた
「若い人たちの間では農業に対する偏見がなくなってきた。大学に限らず、農業高校でも農家出身以外の子どもたちが、意欲を持って入学するようになっている」と説明するのは、福島大学で農学部開設を進める生源寺眞一教授だ。かつて「農業をするのは農家の長男」「農学部での勉強は時代遅れ」というイメージがつきまとった。だが、今や農学は身近な課題やグローバルな問題に立ち向かう斬新な学問と受け止められるようになった。

農学部の新設ラッシュは、ここ10年ぐらい続いている。国立の山梨、徳島、福島、私立の吉備国際、龍谷、立命館などの大学で設置されるなど全国に広がる。今年4月には私立の新潟食料農業大学が新たに設立された。

大阪府の私立摂南大学は、2020年4月の農学部開設に向け準備を進めている。「高齢化や自給率低下が進む半面、企業参入やロボット・ICT活用などの変化もある。直面する課題に取り組める人材育成を目指す」と新学部開設担当課の国分房之輔課長は話す。

このほか、構想段階で農学部新設を進める大学が、複数あると言われている。

学部新設にまでは至らなくても、農学部以外の学部に農業を学ぶ学科を設ける大学が少なくない。文科省の調査によると農学系学科に所属する学生数は増加傾向にある。大学界で農学はブームなのだ。

新設農学部はいずれも地域社会や食品産業との連携を掲げている。山梨大学は地場産業であるワイン研究を掲げ、福島大学は、東京電力福島第一原発事故からの再生・復興への貢献を打ち出している。新潟食料農業大学は、食料産業ビジネスとの密接な関係を目指す。

従来の農学教育や研究は、伝統的に小規模農業と農家経営に軸足を置いていた。しかし、新設農学部では農業専門から領域を大きく広げたのが特徴だ。

文科省の要請を受け、大学学士課程の基準を検討した日本学術会議は2015年、農学を「実践的な価値追求の学問と、幅広い生命科学全般の総合科学の学問」と定義し公表した。従来のコアな農業教育研究に加えて「現代的課題に対応するため、それぞれ発展するだけではなく、連携、融合することで新たな発展を遂げ、新しい領域も生まれている」とした。

食料生産を学ぶ農学の歴史は古いが、近年は加工・流通、安全性の確保、生命にかかわる基礎科学、地球環境への対処に欠かせない幅広い学問であると同会議は位置づけた。

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