花火大会 消えゆく夜空の華 安全確保・警備難しく
毎日新聞2018年10月4日 14時00分(最終更新 10月4日 14時39分)
https://mainichi.jp/articles/20181004/k00/00e/040/300000c

 福岡市で終戦4年後に始まった「西日本大濠花火大会」が今夏を最後に約70年の歴史に幕を閉じた。毎年40万人以上が楽しむ全国屈指の花火大会だったが、観客増で警備が困難になったなどとして、主催者が来年から実施しないと発表した。同様の理由で、伝統ある花火大会の中止や終了が全国で相次いでいる。

 「観覧者の増加や急速な周辺開発に伴って、安全な大会運営は大きな曲がり角に来ています」。大濠花火大会を主催する西日本新聞は、9月14日の朝刊に大会の終了を伝える社告を掲載した。
 市街地にある大濠公園で毎年8月1日に開かれてきた大濠花火大会は1949年、戦没者の鎮魂と戦後復興を願って始まった。一時中断を経て今夏で通算56回を数えたが、「福岡市の成長や交通網の整備」などで観客が急増して規模が膨れ上がり、「安全対策の限界」(社告)にきていると判断したという。
 全国の多くの花火大会が同様の課題に直面しており、京都府宇治市は昨年12月、61年から続く「宇治川花火大会」の終了を発表した。大会は京都府福知山市の花火大会会場で起きた屋台の爆発事故(2013年)や台風による宇治川の増水(14年)などを受けて休止状態だった。
 市観光協会によると、最後の大会となった13年には約20万人が訪れ約1000人の警備体制を敷いた。警備強化が求められる中、費用面でも再開が困難になったという。協会の門川大晃(ひろあき)さん(33)は「会場変更や規模縮小なども検討したが安全性が守られなかった。代わりに楽しんでもらえる行事を考えていきたい」と語る。
 兵庫県宝塚市では15年を最後に「宝塚観光花火大会」の休止が続く。1913年に始まった歴史ある大会だが、会場周辺にマンションが増え安全確保が難しくなった。会場を移すことが決まっているが、警備費用などが従来の3倍になるため再開が見送られている。主催する市などは今年8月、新しい会場で試験的に100発を打ち上げた。市観光協会の橋本隼人さん(35)は「安全面の確保を徹底した上で再開を目指したい」と言う。
 北九州市小倉北区で8月に開催される「わっしょい百万夏まつり」にもマンション開発が影を落とす。市中心部の勝山公園から打ち上げる約3000発の花火が毎年祭りのフィナーレを飾ってきたが、近隣のマンション住民から苦情が出たため、今年は高さを制限して小型花火で実施した。
 一方で楽しみにしていた市民からは「以前見えていた場所から見えなくなった」「迫力に欠ける」といった苦情が寄せられた。わっしょい百万夏まつり振興会の片岡功太さん(28)は「来年も開催する方針で、打ち上げ場所の変更など議論を重ねている。年内には結論を出したい」と話した。
 全国の花火大会のスケジュールを取りまとめている日本煙火協会(東京)は「市街地などでの開催は難しくなってきているが、新たに始まった大会もあり、全体では極端に減っているわけではない」としている。【末永麻裕】
近年終了や中止・休止が決まった主な花火大会
大会名           開催都市    最終実施年 開始年
宇治川花火大会     京都府宇治市  2013年 1961年
宝塚観光花火大会    兵庫県宝塚市  2015年 1913年
神奈川新聞花火大会   横浜市      2016年 1986年
岸和田港まつり花火大会 大阪府岸和田市 2017年 1953年
西日本大濠花火大会    福岡市      2018年 1949年