https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-10-09/PGAVD86JIJUP01?srnd=cojp-v2

IMF、世界経済成長予想を2年ぶり下方修正−貿易戦争の打撃で

Andrew Mayeda
2018年10月9日 10:00 JST
→予想引き下げは2016年7月以来−最新の世界経済見通し
→新興国市場の動揺も要因−日本の成長率予想は小幅上方修正

国際通貨基金(IMF)は9日、世界経済の成長率予測を2年ぶりに下方修正した。貿易摩擦のエスカレートや新興国市場への圧力を背景に、世界経済は伸び悩むとの見解を示した。

  IMFはインドネシアのバリ島で今週開く年次総会を控えて公表した世界経済見通し(WEO)で、今年と来年の世界成長率をいずれも3.7%とし、3カ月前に示した3.9%から引き下げた。下方修正は2016年7月以来。


  世界経済は11年以降で最高だった昨年並みのペースになる方向に依然あるものの、成長の勢いに衰えが見え始め、全体的なパフォーマンスの陰にブラジルやトルコなどの新興国の弱さが隠れていることを新たな予測は示唆した。米経済成長については、今年は据え置いたが、貿易摩擦の影響を理由に来年は下方修正した。

  IMFチーフエコノミストのモーリス・オブストフェルド氏は「4月時点の期待よりも均衡を欠き、不確かさが増した形での景気拡大が見込まれる」と述べた。

  IMFは世界経済見通しへのリスクが過去3カ月に高まり、下向きに傾斜したと指摘。リスクとして、米国と中国などとの貿易戦争のさらなるエスカレートや、予想より急激な金利上昇などを挙げ、新興国からの資金逃避を加速させると予想した。

  IMF・世界銀行の年次総会には、IMF加盟189カ国の財務相と中央銀行総裁らが出席する。総会ではトランプ米政権と中国との通商対立や米連邦準備制度など主要国中銀の金融引き締めの影響が議論の中心となる見通し。

  IMFは貿易戦争が続けば、世界の成長率にかなりの打撃になると分析。トランプ大統領が自動車に対する世界的な関税を含め全ての脅しを実行するシナリオでは、20年の世界の国内総生産(GDP)は0.8%余り押し下げられ、長期トレンドラインを0.4%下回ると試算。IMFモデルに基づくと、来年の中国のGDPは1.6%、米国は0.9%押し下げられる可能性もあるとの予測を示した。

  IMFの予想下方修正は広範囲にわたっており、トランプ政権が発動した関税と他国の報復関税の影響を反映させ、米国の来年の成長率を2.5%と、7月から0.2ポイント引き下げた。今年の成長率予想は2.9%に据え置いた。トランプ政権は中国製品に対する関税対象を昨年の同国からの輸入額5000億ドル(約56兆6000億円)強に拡大することも辞さないとしているが、IMFの予測はこれを考慮に入れていない。
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