明治期に日本の近代化をリードした大隈(おおくま)重信や江藤新平らが学んだ佐賀藩(肥前(ひぜん)藩)の藩校「弘道(こうどう)館」の商標を保有する佐賀藩主の子孫の女性が10日、佐賀県に商標を無断で使用されたとして、県に使用差し止めなどを求める訴えを東京地裁に起こした。県が「弘道館2」の名称で行っているセミナーなどについて「史実と無関係なものが目立ち、社会に悪影響を及ぼす」としている。

 訴えを起こしたのは、1781年(天明元年)に弘道館を設立した佐賀藩第8代藩主・鍋島治茂(はるしげ)の直系子孫に当たるさいたま市の女性。

 訴状などによると、「弘道館」の商標は平成24年12月に出願し、25年10月に登録された。県は「弘道館2−藩校しようぜ。−」の名称でセミナーやイベントなどを主催。「キミを世界に輩出する21世紀型藩校」と位置づけ、イラストレーターやタレントらを講師に招いて「夢学」や「なりたい自分になる学」といったテーマの講座を開いている。

 こうしたセミナーなどは27年1月に山口祥義(よしのり)氏が知事に就任する前からあったが、山口知事の就任後は、史実と関係のないセミナーやイベントが目立つといい、原告の女性は同年7月、山口知事に名称の無断使用をやめるよう注意。その後、「協力して仲良く県の発展に寄与したい」と複数回にわたり提案したが、聞き入れられず、提訴に踏み切ったという。

 女性は、山口知事就任後の県のセミナー事業について「幕末の日本の歴史をゆがめかねない行為で、社会に及ぼす悪影響は計り知れない」と主張している。

 佐賀県は産経新聞の取材に対し、「『弘道館2』については適正に使用しており、商標権の侵害には当たらないものと考えている」としている。



 ■佐賀藩の弘道館 水戸、但馬(たじま)と並ぶ「天下三弘道館」の一つに数えられる藩校で、佐賀藩(肥前藩)第8代藩主・鍋島治茂が1781(天明元)年に設立。卒業できなければ家禄の一部を没収されるほどの厳しさで知られ、明治新政府で活躍した副島種臣(そえじまたねおみ)や大隈重信、江藤新平ら多くの佐賀藩士が儒学や兵学、洋学などを学んだ。

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