中国・長江(揚子江、Yangtze River)に生息する絶滅危惧種のスナメリ。以前、中国・農業部長江流域漁政監督管理弁公室(長江弁)は、スナメリの繁殖保護地域内の2地区から14頭のスナメリを選別し、国内2か所の水族館に移送することを発表していたが、現在これが動物愛護者や専門家の間で注目を集め、論争になっている。

中国のニュースサイト、澎湃新聞(The Paper)の記者は、長江弁の趙依民(Zhao Yimin)副主任、中国野生動物保護会(China Wildlife Conservation Association)・水生野生動物保護分会(水野分会)の李彦亮(Li Yanliang)会長や関連の専門家などに取材を行い、論点をまとめた。

長江弁の趙副主任は、「水族館との契約期間は3〜5年で、水族館にはこの期間内にスナメリの人工環境下における繁殖技術面で基準を満たすことを要求している。水族館側はこうしたプレッシャーを跳ねのけなくてはならない。そうでなければ、社会に対し説明がつかない」と話す。

趙副主任によると、政府は継続的に水族館側の作業進捗を監督しており、もし今後、水族館がスナメリの繁殖・育成における条件を満たせなかった場合は、「再移送も含めたしかるべき調整措置」を取るという。

また、注目を集めていたスナメリをイルカショーなどの目的のために訓練するのかという点について、趙副主任は「スナメリを移送した水族館は展示のためであって、ショー目的ではない」と強調している。

■なぜ現地自然保護区施設、関連保護施設でなく水族館なのか

中国科学院の研究員によると、長江の自然環境は回復しつつある。スナメリの個体数が激減していた状況から、このままいけば一定の保全が可能で、近い将来には個体数も回復する見通しだという。

「すでに長江の中流から下流にかけて多くの保護区が指定されている。各指定保護区は一定の個体数を確保し、全体で約100頭の個体が保護されている。しかし本来、こういった自然保護区を多く作るようになった理由は、突発的な自然環境リスクや人為的要因などによる影響を避けるためだ」と、この研究員は水族館への移送には否定的だ。

これに対し、瀋陽理工大学(Shenyang Ligong University)生態研究室の周海翔(Zhou Haixiang)主任はスナメリの移送支持派だ。

「長江の環境回復にはまだ一定の時間が必要だ。現在の自然保護区内の繁殖状況は楽観的だが、これら保護区の生態は比較的単一で、保護区内で万が一問題が起これば、区域内すべてのスナメリに脅威を与えることになるだろう」(c)東方新報/AFPBB News

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