大麻よりタバコ・アルコールの方が危険だ、というのは理屈の上では正しいのだが、
社会は理屈だけではうまく行かないのだよ。

まずは危険性のある薬物について、Wikipediaの項目『大麻』で引用されている
2007年に医学雑誌『ランセット』に掲載された図を見てほしい。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/92/Rational_scale_to_assess_the_harm_of_drugs_%28mean_physical_harm_and_mean_dependence%29_ja.svg

確かに大麻は相対的には安全だ。しかしその理屈で言うと、この図で黄色い○
(エクスタシーなど)の薬物や、オレンジの○の薬物もすべて解禁しなくてはならなくなる。
当然おびただしい種類の麻薬が社会にあふれることになる。
大麻擁護派は触れようとしないが、世の中には実に多くの種類の麻薬があるんだ。
それらがカオス的に蔓延してしまった後で、最も危険なコカインやヘロインだけを
規制することは事実上不可能になる。コカインやヘロインが蔓延すると本当に
社会が崩壊するというのはアヘン戦争当時の清朝を思い起こせば十分だろう。

そうなると歴史的な成り行きで社会に広く浸透しているアルコールや煙草だけを
認めて、その他は禁止にするというのは社会的に理解されやすい方法なんだよ。
大麻で言えば日本における市場規模はたったの700億円で、アルコールや
タバコに比べたらほとんどゼロといって良い。つまり日本では大麻はほとんど
流通していないのだから、社会的に大麻が受け入れられているとは言えず、
禁止するのが妥当となる。

『歴史的理由』というのは確かに理論的ではない。しかしたとえ少々不合理で
あっても、他のより危険な薬物がなし崩し的に社会に蔓延するのを防ぐために
役に立つのであれば、十分に社会的意義があるのだ。この辺の理屈が
もう少し浸透してくれればよいと思う。