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ダンパー問題 改ざん指摘後も1か月不正検査と出荷続ける
2018年10月18日 18時27分免震データ改ざん

油圧機器大手の「KYB」グループによる免震・制振用のダンパーの検査データ改ざん問題で、工場の従業員が改ざんの疑いを上司に指摘したあとも、およそ1か月にわたって不正な検査を続け製品を出荷していたことがわかりました。

「KYB」とその子会社は、平成12年3月からことし9月にかけて販売した、地震による揺れを抑える建物用のダンパーで検査データを改ざんし、全国で1000件近くの物件に設置されています。

会社によりますと、この問題は、工場の従業員が改ざんの疑いを指摘したことで発覚しましたが、指摘後もおよそ1か月にわたって不正な検査を続け製品を出荷していたことがわかりました。

疑いを指摘したのは、データの書き換えを行っていた検査員とは別のダンパーの組み立てを担当していた従業員で、検査員との雑談の中で問題を知り、ことし8月上旬に上司に報告していたということです。

しかし、会社がデータの改ざんをやめたのは、社内調査を始めるなどしたあとの先月8日になってからでした。

これについてKYBは「指摘された情報の信ぴょう性が確認できず、検査を改める判断が遅くなった。指摘後も不適切な製品を生産していたことは間違いない」と説明しています。

基準値から40%以上ずれも

油圧機器大手のKYBグループによる免震・制振用のダンパーの検査データの改ざん問題では、ダンパーのクッションの硬さ・柔らかさを示す値が、基準より40%以上ずれた製品が出荷されていたことも社内の調査で明らかになっています。

クッションが硬すぎると地震の揺れを吸収できなかったり、取り付け部分が損傷したりするおそれがあり、逆に柔らかすぎると建物の揺れが大きくなってしまうおそれなどがあります。

国土交通省が認定する免震ダンパーは、クッションの性能を示す値が基準からプラスとマイナスいずれも15%のずれまでを許容範囲としています。

KYBが、残されていた検査データを調べたところ、免震ダンパーではずれの大きいもので、許容範囲より硬いプラス42.3%の製品が出荷されていたということです。

国土交通省は、こうしたずれがあった場合でも建物の耐震基準は満たしていて、震度6強から7程度の揺れで倒壊するおそれはないとしています。

一方、制振ダンパーについては、国土交通省が定めた許容範囲はありませんが、顧客と契約した範囲を超えていて、基準からのずれが大きいものではマイナス17.9%とプラス20.5%の製品が確認されたということです。

KYBによりますと、ダンパーの性能を示す値が定められた範囲を超えると、製品を分解して調整し、改めて検査する必要があります。しかし、作業には平均で5時間ほどかかり、検査の現場からは作業を省くためにデータを改ざんしたという証言が出ていて、こうした手口は口頭で引き継がれていた可能性があるということです。

交換用の製造に2年

KYBが交換の対象にしているダンパーは1万900本余りに上り、すべての交換用のダンパーを製造するのに、2年後の2020年の9月ごろまでかかるということです。

KYBグループでは、現在、免震用と制振用を合わせ1か月におよそ120本のダンパーを製造しています。今後、設備や人員を増やし、来年の春ごろまでに月におよそ500本を製造するとしていて、新たな受注は取りやめます。

一方、交換の工事にも手間と時間がかかるおそれがあります。国土交通省によりますと、とりわけ柱やはりに取り付ける制振ダンパーは、壁の中に設置されているケースがあり、その場合、いったん壁を壊す必要もあることから、建物の利用に影響が及ぶことが考えられるということです。