今年1〜8月に東京都内で起きた特殊詐欺事件で悪用された携帯電話の約3割が、ベトナム人名義の契約だったことが警視庁の調査で分かった。
今年に入り急増しており、捜査関係者は「偽造身分証対策の強化を受け、犯人側が在日ベトナム人の真正な在留カードを利用しているのではないか」と分析。
同庁は日本語学校などに、身分証の適切な管理を指導するよう求めている。

「日本語ができなくても携帯電話契約ができるよう仲介します」。
ベトナム語で書かれたフェイスブックの投稿を見て、昨年来日した30代前半のベトナム人男性は投稿者に連絡を取った。

4月下旬、待ち合わせ先のJR秋葉原駅に現れたのは若いベトナム人の男。
近くの家電量販店に連れて行かれ、パスポートと在留カード、預金通帳を預けた。

新しいスマートフォン1台を契約し、男に謝礼の5000円を渡した。
約2カ月後、自分のスマホ以外に、契約した覚えのない格安スマホ2台分の請求書が男性の元に届いた。

仲介者の男に確認しようとしたが連絡が取れなくなっていた。
その後このうち1台が、4月に東京都江東区の70代女性宅にかかってきた特殊詐欺の電話に利用されていたことが、警視庁の捜査で分かった。

格安スマホは男に仲介を頼んだ日に契約されており、同庁は男が預かった書類を無断で使って契約し、特殊詐欺犯に渡ったとみている。
男性は「個人情報をしっかり管理しなければいけなかった」と反省しているという。

警視庁が特殊詐欺に利用された携帯電話のうちベトナム人名義の数を調べたところ、昨年1年間は2件だったのに、今年1〜8月は全体の3割に当たる144件に急増していた。
このうち9割は直接対面せず契約できる格安スマホで、真正な在留カードで契約されたケースが多かった。

ある格安スマホ大手では、今年4月以降に契約した外国人のうち、ベトナム人が9割を超えた。
同社関係者は「明らかに異常値だが、真正な在留カードを使われたらお手上げだ」と話す。

在日ベトナム人を支援してきた企業コンサルタントの内藤昭資さんは「支援が届かず孤立したベトナム人が不審な業者を頼ってしまう。技能実習制度や留学制度のひずみが犯罪の増加につながっている」と警鐘を鳴らしている。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018102100286&;g=soc