https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181105/k10011698681000.html

「林間学校」「部活・サークルの合宿」「修学旅行」。学生時代の一大イベントですが、
もしかしたら、再来年の夏は、これらのイベントが実施できなくなる学校がでるかもしれません。
その理由は東京オリンピックでのバス不足で、組織委員会から異例の協力要請があったのです。
ネットには「欲しがりませんオリンピック終了までは!ってか?戦時中かよ!」などといった
批判的な書き込みも。いったい何が起きているのか?調べてみました。

異例の協力要請

ことし7月下旬のこと。全国の教育委員会や大学に文部科学省やスポーツ庁から異例の協力要請の文書が送られました。

添付された組織委員会の文書には「関東、東北や中部、近畿など幅広い地域のバス事業者の協力を得る必要がありますが、
東京大会の開催時期である夏から初秋の期間は、観光などレジャーやスポーツイベントの開催などに伴う観光バスの
高稼働時期となることから、バス不足などが懸念されています」「バスの利用を伴う教育関連イベントの実施時期をずらすなどの
ご協力をお願いしたい」などと書かれています。

期間は、オリンピック期間を中心に7月18日から8月10日までの3週間余り。要請の対象は、「林間学校」「部活・サークルの合宿」
「修学旅行」「遠足」といった学校行事です。

楽しかった林間学校…

取材をしてみると、教育現場では、頭を悩ませていました。それは行事の時期をずらすのが、そう簡単なことではないからです。

組織委員会が示した期間は、例年、都内の多くの自治体の小学校などで、林間学校や臨海学校が行われています。たとえば品川区。
毎年夏休みのこの時期に、小学5年生を対象に区内の37校のほとんどがバスを利用して林間学校を行っています。
行き先は、栃木県日光市にある区の宿泊施設です。子どもたちには、キャンプファイヤーやハイキングが大人気。

ただ、オリンピックやお盆の時期を避けると、残っているのは8月中旬以降となります。その間に全部の学校を、宿泊施設で受け入れるのは不可能です。
このままでは、林間学校ができる子どもとできない子どもが出てきてしまうおそれがあります。

「オリンピックの影響がこういうところにも及ぶということで、少し驚くと同時に悩ましく感じている。林間学校にどれぐらいのバスが使えるのか
できるだけ早めに情報をほしい」(品川区教育委員会学務課 篠田英夫課長)

夏休み以外で実施することはできないのでしょうか?それも難しいそうです。品川区立の御殿山小学校では、授業日数などの確保のため、
授業の一部を土曜日にも行っています。このため、夏休み以外の時期に林間学校を行うと、授業日数の確保ができなくなるおそれがあるということです。

「2年後だけ林間学校を行わないのは、児童があまりにもかわいそうだ。子どもたちにもいい体験になるのでどうにか実施したい」(御殿山小学校 勝進亮次校長)

大事な部活の合宿が…

「オリンピックと部活の合宿、どちらを優先させるか判断はとても難しい」 東京オリンピックの大会会場から離れた大阪でも、こうした声が聞かれました。

大阪・堺市にある泉陽高校。取材に訪れた日の放課後、体育館では、バドミントン部やバレー部の練習で、熱気にあふれていました。
この高校では、例年、夏休みの7月下旬から8月中旬に、10以上の部活が合宿を実施。ことしは、滋賀県や愛媛県などで合宿をした
9つの部活が貸し切りバスを使ったそうです。高校では、要請を受けて、再来年の夏の合宿を見直し、バスを使わないですむよう近隣の施設で
行うなどの対応を検討しています。

しかし、すべての部活で体育館やグラウンドなどを備えた新たな合宿の施設を確保できる見通しはたっていないということでした。
日程をずらそうにも、夏休み中の補講やお盆の時期と重なってしまいます。夏の合宿は、それぞれの競技の大会前に生徒が集中して練習に打ち込めるうえ、
部員どうしの結束も強まる大事な機会だということですが、高校では再来年は夏の合宿を中止せざるをえないおそれもあるとしています。