日本には現在でもこれがいる

芽殖孤虫
致死率100%の謎の寄生虫

芽殖孤虫症を引き起こす条虫網擬葉目裂頭条虫科に属する寄生虫の幼虫である。
世界で18症例が報告され、そのうち最大の8例が最初に報告された日本で発生している。
芽殖孤虫は薄い嚢に包まれており、大きさは数ミリから1センチ程度で皺だらけである。
形状は様々でワサビやショウガの根のような形をしているものが多いが、
中には蝶の羽様に拡がった虫体も確認されている。
 体内に侵入すると無秩序に発芽した芽が嚢を破って他の部位に到達し、
そこで成長しながら新たな嚢に包まれて分裂する。それを繰り返し体内で無数に増殖していき、
やがて皮下組織・筋肉や内臓に脳、骨などあらゆる組織器官に虫体が蔓延、全身が虫だらけになる。
その量だが、2例目の患者では筋肉片約3平方センチメートル内に20〜25個もの蟲嚢があったという。
芽殖孤虫がはびこる様は、2例目の東大病院での部検所見において
「無数ノ大小種々ナル条虫及ビ嚢虫ノ湧キ出ルヲ認メ、一見慄然タラシムルモノアリ」
「全身至ルトコロニ居リテ、肺ノ如キハ最モ著シ」
「斯ノ如ク多クノ蟲ニ寄生セラレテハ蟲ヲ殺スヨリ人間ヲ殺ス方早シ」と記されている。
 症状はまず、局所皮膚に痤瘡様小結節ができ、やがてそれが全身に広がる。
その結節ないし突起は痛みや痒みを伴い、掻き潰すと白い虫体が出てくる。
その後の経過は症例により異なるが、主に下半身の皮下組織が腫れて肥大していき、
細菌感染なども生じ、場合により皮膚が象皮病様になることもある。
内臓へ侵入した場合は出血を伴い、肺では喀血を起こす。
脳に侵入した場合では言語障害・運動障害といった脳症状を引き起こしていく。
(体内を寄生虫の幼虫が動き回ることで引き起こされる症状を幼虫移行症という)
 経過は慢性的で数年から十数年もの長期にわたり、最終的には死に至る。
有効な駆除薬は無く、治療法は外科手術による虫体の全摘出しかないが事実上不可能といえる。
 芽殖孤虫の「孤虫」とは成虫が同定されていないことを表す。
人間が最終宿主では無い為人体で成虫にならず、成虫の同定が出来ていない。
犬や猫、猿への感染実験でも最終宿主であるとは確認されなかった。
人間への感染経路は不明で、終宿主や中間宿主といった生活史は一切判明していない。
ゆえに予防する方法も分からないままである。