■新電力のシェア推移

 電力小売全面自由化の進捗状況について、経済産業省・資源エネルギー庁が9月18日に発表した資料によると、2018年5月時点の新電力のシェア(販売電力量ベース)は、全体の13.5%に上昇した。4月のシェアは12.8%だった。

 2016年4月の全面自由化直後の新電力のシェアは5.2%だったが、2017年5月(同10.4%)以降は10%を超えて推移している。

■新電力のシェアの推移
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 5月の新電力の種類別シェアは、大口需要家向けの特別高圧・高圧分野が15.8%、低圧分野が9.1%。特別高圧・高圧分野は時期によって変動しつつも全体的に上昇傾向にあり、低圧分野は緩やかながらもシェア拡大傾向が継続している。

■新電力への切り替え(スイッチング)件数

 一般家庭などが含まれる低圧分野のスイッチング件数(新電力への切り替え件数)は、2018年6月末時点で約706万件になり、低圧の総契約口数の11.3%を占めた。

 地域別でスイッチング率が高いのは、東京の15.5%(切替件数356万8,000件)、関西の14.8%(同149万4,000件)、北海道の11.4%(同31万3,000件)。

 一方、スイッチング率が低かったのは中国の3.5%(同12万2,000件)、北陸の3.3%(同4万1,000件)、沖縄の0%などで、地域によって大きな差があった。

低圧分野のスイッチング状況(2018年6月時点)
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■新電力会社の販売実績は大幅増

 一方、帝国データバンクは9月7日、「第4回 新電力会社(登録小売電気事業者)の実態調査」の結果を発表した。調査は経済産業省・資源エネルギー庁の「登録小売電気事業者」に8月9日時点で登録されている508社について、同社の企業データベースをもとに分析したもの。なお、登録小売電気事業者の社数は2016年4月時点が266社で、10月30日時点では528社に増加している。

 登録小売電気事業者508社を、資源エネルギー庁発表資料を基に同社が集計したところ、5月時点で電力販売実績があるのは73.6%(374社)だった。2016年3月に実施された前回調査では、資源エネルギー庁管轄の特定規模電気事業者に登録された799社(2016年3月28日時点)のうち、販売実績があったのは14.8%(118社)だったことから、事業の稼働率が大幅に増加している。

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ただし、前回調査時の特定規模電気事業者799社のうち、2016年4月から電力小売事業をするうえで必須になった小売電気事業者に登録をしたのは、8月9日時点で217社(構成比27.2%)にとどまっている。これについて帝国データバンクは、特定規模電気事業者の7割ほどが、事実上電力事業から撤退している可能性があるとしている。

■業界環境の変化

 東日本大震災以降、新電力事業への注目は高まっている。従来の枠組みである「特定規模電気事業者(PPS)」から、2016年4月に「小売電気事業者」への登録が必要になり、業界環境は変化している。PPS時代と異なり、副業としての電力事業ではなく、電力事業を主業に据える企業が3倍近くにのぼり、電力販売実績のある企業も大幅に増加するなど、文字通り「新電力会社」が市場に浸透してきていることが明らかになった。

 その半面、売上高が100億円を超えるような大手企業の比率は高く、価格面での競争も激しくなっている。破産した福島電力のように、急激な事業拡大に内部体制、資金面が追いつかずに破綻するケースは今後も発生する可能性が高いと帝国データバンクは指摘している。

2018/11/10 14:00
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