フェンスを乗り越え、海を泳ぎ、民家の屋根裏に潜伏──今年4月、映画のような脱獄劇を繰り広げた、松山刑務所の平尾龍磨受刑者(27)。
捜査員1万5000人と警察犬16匹の目をかいくぐり、23日間にわたって世を騒がせた当人から、壮絶な逃走生活を克明に綴った手紙が届いた。ジャーナリストの高橋ユキ氏が報告する。

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B5サイズの便箋14枚には、隙間なく小さな文字が埋められている。

〈前略 ご返事を差し上げるのが遅れて申し訳ございません〉
〈ボールペンで手紙を差し上げるのが礼儀だと思いますが、なぜか書いている途中でインクが途切れたりして失礼な文字になってしまうので、シャーペンで書いています。お許し下さい〉

へり下った文面と丁寧な筆致は、世を騒然とさせた犯罪者像とは程遠い。

今年4月に松山刑務所大井造船作業場(愛媛県今治市)から脱獄、23日間にわたり逃走を続けた平尾龍磨受刑者から手紙が届いたのは、10月上旬のことだった。

〈私のことは気になさらず、どんなことでも聞いてもらって大丈夫です〉

出所まであと1年半の模範囚だった彼は、なぜ脱獄し、どう逃げたのか。手紙の中で明かした23日間の模様は、壮絶の一言に尽きる。

◆〈大井は腐っていました〉

大井造船作業場は全国に4つある開放型矯正施設のひとつで「塀のない刑務所」とも呼ばれる。居室に鉄格子はなく、施錠もされていない。
そのため、凶悪犯や薬物常習者ではないなど、複数の条件を満たす模範囚を入所対象としている。

平尾受刑者は約120件の窃盗罪と建造物侵入罪で懲役5年6月の判決を受け、2015年から服役。
昨年、大井造船作業場に移った。

2020年1月に刑期満了を迎える予定だった平尾受刑者だが、4月8日夜、作業場の寮の窓から逃走した。
民家から盗んだ乗用車を走らせ、道路で結ばれた離島の向島に向かい、無人の家屋に潜伏。その後、瀬戸内海の尾道水道を泳いで本州側へと渡り、逃走を続けた。

身柄を確保されたのは同月30日、向島から西に65km離れた広島市内だった──。

平尾受刑者は脱獄の理由について、〈当時の動機や目的などは何点かあります〉と前置きしながらこう綴っている。

http://news.livedoor.com/article/detail/15582392/
2018年11月12日 11時0分 NEWSポストセブン

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