2018年11月14日 18:14

宇宙誕生の謎を探る次世代の巨大加速器「国際リニアコライダー(ILC)」を国内に誘致する構想を巡り、日本学術会議の検討委員会は14日、「国際経費分担の見通しなしに日本が誘致の決定に踏み切るのは危険」だとして慎重意見を示した。ILCは米欧などと協力して進める計画だが、約8千億円とされる巨額の建設費をどうまかなうかは未定で、性急な誘致にクギを刺した。

ILCは宇宙誕生直後の「ビッグバン」を再現する巨大な加速器。東北地方の北上山地が建設候補地に挙がっている。国際研究者組織が日本での建設を求めており、文部科学省が7月、科学者の代表機関である学術会議に審議を求めていた。

学術会議の検討委は14日、その回答案を提示した。ILCの建設には巨額の費用がかかり、誘致の検討にあたっては「持続可能性」の考慮が必要との認識を示した。現状では学術界にもILC建設への理解や支持が広がっておらず「丁寧かつ継続的な説明と意見交換が不可欠」と指摘した。

学術会議は年内にも文科省への正式な回答をまとめる見通し。学術界の幅広い支持が得られなければ、政府が早期の誘致に踏み切るのは難しい。

ただ、ILCは2兆円超の経済効果をもたらすとの試算もあり、東日本大震災で被災した東北地方の復興を加速するとの期待が大きい。政界や経済界にも推進論は多く、文科省はこうした意見も踏まえて対応を決める。

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO37750950U8A111C1000000?s=0