https://mainichi.jp/articles/20181119/k00/00m/040/060000c

原発事故
浪江町民 東電と国相手に27日に集団提訴
毎日新聞 2018年11月18日 20時41分(最終更新 11月18日 21時01分)

ADR打ち切り受け全国初 原告は最大で2000人の見通し

 東京電力福島第1原発事故の慰謝料増額を求め、福島県浪江町民約1万5000人が申し立てた国の裁判外紛争解決手続き(原発ADR)が打ち切られた問題で、町民を支援する弁護団は18日、東電と国を相手取り、27日に福島地裁に提訴すると明らかにした。ADRで示された和解案を尊重するとしていた東電が、和解を拒否し続けたことへの慰謝料「期待権侵害」などを盛り込む。

 この日、福島県郡山市で記者会見した弁護団によると、原発事故のADR打ち切りを受け集団訴訟を起こすのは全国で初めて。原告数は27日の第1次提訴で100人程度を見込んでおり、順次追加で提訴。最大で約2000人になる見通し。

 請求するのは(1)避難(2)コミュニティー破壊(3)被ばく不安(4)期待権侵害−−への慰謝料。町は昨年3月に帰還困難区域を除いて避難指示が解除されたが、訴訟では住んでいる地域に関わらず、全員で一律の金額を請求する。1人当たりの請求額や総額は未定。

 町は2013年5月、町民の代理人として、1人あたり月10万円の精神的賠償を35万円に増額するよう求めて集団ADRを申し立てた。申立人は約1万5000人で、町民の約7割に上った。

 国の原子力損害賠償紛争解決センターは14年3月、月5万円(75歳以上は最大月8万円)を一定期間上乗せする和解案を提示。町民の代理人としてADRを申し立てた町は受け入れたものの、東電が一律の和解を計6回にわたって繰り返し拒否したため、今年4月に和解手続きが打ち切られた。この間、高齢者など申立人約850人が亡くなったという。
 この日は郡山市内で原告団の設立総会が開催された。記者会見で弁護団長の日置雅晴弁護士は「東電は和解案を筋道の通らない理由で拒否している。ADRが強制力を持たないことでないがしろにされている以上、提訴に踏み切ることでしか、町民を救済できない」と意義を説明した。【宮崎稔樹】

原発ADR

 原発事故の賠償に関する指針を策定する国の「原子力損害賠償紛争審査会」の下部組織「原子力損害賠償紛争解決センター」による裁判外の紛争解決手続き。簡便な手続きで早期救済を図るためのもので、東京電力との直接交渉が不調に終わった場合などに被災者がセンターに申し立てを行い、調査官が被災者と東電から提出される証拠を整理。仲介委員が和解案を作成し、双方が合意すれば和解が成立する。