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田畑と雑木林が広がるのどかな集落にサイレンが鳴り響いた。福島県小野町の塩田恒美(つねよし)さん(61)方で
21日深夜発生した住宅火災は、焼け跡から7人の遺体が見つかり、幼い子ども4人を含む7人と連絡が取れていない。
炎は短時間で燃え広がったとみられ、近所の人らは「火の海で手が付けられなかった。仲のよい家族だったのに」と言葉を失った。

塩田さん方は恒美さんの母(81)、妻(57)、長女(30)と夫(33)、その長男(8)、次男(6)、長女(4)、三男(3)の4世代9人暮らし。

隣に住む会田正夫さん(70)によると、21日午後11時ごろ、恒美さんの妻があわてた様子で「助けて」とドアをたたいた。
ガラスを破って逃げてきたのか、手は血だらけ。塩田さん方1階から火が出ており、数分後には2階まで燃え広がり「ボーン」という音も聞こえた。
会田さんは「昨日、自宅で取れたダイコンを届けに行った時、4人きょうだいの長男は『ただいま』って帰ってきた。
あいさつをしっかりできる良い子だったのに……」と悔しさをにじませた。

親族の女性によると、恒美さんの長女から仕事で外出していた夫の携帯に電話があった。
「『熱いよ』と言って切れたらしい。火の中にいたのだと思う」。夫は鎮火後に現場に到着し、放心状態で立ち尽くしていたという。
この女性は「残された家族は、これからどうしていけばいいのか」と悲しみをにじませた。

近隣住民らによると、恒美さんは子どもの頃から体が不自由で、つえをついて歩いていた。数年前まで縫製会社に勤めていたが、
この数年は首の手術をして、自宅で寝ていることが多かったという。

子どもたち4人は仲がよく、自宅近くで自転車や三輪車に乗って遊ぶ姿がよく見られた。小学3年の長男が通う町立飯豊小学校の
橋本幸夫校長(59)は「誰にでもやさしくできる子で、困った同級生を助けてくれた。21日のマラソンでも約1キロを完走したばかりだったのに」
とショックを隠せなかった。

下の子ども3人が通う保育園の女性職員(50)によると、17日にあった保育園の学習発表会では3人とも元気にステージに立っていた。
三男は今月誕生日を迎え、22日に保育園で誕生会を開く予定だった。「昨日までみんな一緒にいたのに……」とうつむいた。

現場では、恒美さんの母の友人女性(79)が手を合わせた。「腰が曲がって歩くのが不自由だったが、逃げてほしかった。
子どもたちまで犠牲になるなんて」と悔しがった。