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 中身スカスカ、白紙委任の“移民法案”の審議が猛ダッシュで進んでいる。なりふり構わず、外国人労働者受け入れ拡大を目指す裏には、政治の利権が絡んでいる。膨らむ利権に与野党問わず群がる中、その筆頭格を担うのは麻生財務相だ。

 第2次安倍政権の発足後、真っ先に外遊に飛び立ったのは麻生大臣だった。訪問先はミャンマー。2013年1月に首都ネピドーで当時のテイン・セイン大統領と会談し、ミャンマーの対日債務5000億円の一部放棄を表明した。

 麻生大臣は翌月に来日したミャンマーの政府高官3人と財務省内で経済協力について意見交換。同月には経団連の米倉弘昌会長(当時)を団長に大手企業の首脳ら約140人が同国を訪問し、人材育成計画を提案した。豊富で安価な労働力を求め、政財界を挙げて現地詣でを過熱させたのだ。

 その後も麻生大臣は来日したミャンマー政府関係者と、現在までに11回会談。麻生大臣が同国に熱を上げるのは「日本ミャンマー協会」(JMA)の最高顧問の肩書を持つことと無縁ではない。

 JMAは宮沢内閣で郵政相を務め、自民から民主などへ渡り歩いた渡辺秀央元参院議員が会長の一般社団法人。現在は、渡辺氏の息子が常務理事兼事務総長として業務を仕切っているという。

 役員名簿には麻生大臣のほか、〈別表〉の通り自公の大物がズラリ。立憲民主の福山哲郎幹事長も名を連ね、民主党政権で要職を歴任した仙谷由人氏も今年10月に亡くなるまで副会長を務めていた。

 問題は、JMAがミャンマーからの「実習生あっせん利権」を独占していることだ。

 民間の人材あっせん会社は、実習生受け入れに関与できない。代わりに受け入れ先との仲介役を担うのが、「監理団体」と呼ばれる組織。ミャンマーからの受け入れで、監理団体から「求人票の事前審査業務」と称して手数料をピンハネしているのが、JMAだ。

 ミャンマーから実習生を受け入れる監理団体は、JMAに「ミャンマー人技能実習生育成会」への入会を義務付けられる。初年度は入会・年会費合わせて10万円。翌年から毎年5万円、実習生が3人増えるごとに1万円ずつ上乗せされる。

「JMAは『ミャンマー労働省の要請ならびに、在日ミャンマー大使館の委託に基づき』失踪防止の観点から、監理団体をチェックしていると説明しますが、ひとつの社団法人が実習生あっせんを独占するシステムは、他国からの受け入れでは存在しません」(技能実習生問題の取材を続けるジャーナリストの出井康博氏)

 所管の法務省も昨年6月の参院内閣委の山本太郎自由党共同代表の質問で、「このような団体というのは(他に)承知していない」(佐々木聖子法務大臣官房審議官)とJMAの“特権”を認めた。

 麻生大臣の政治力もあってなのか、安倍政権下でミャンマーからの実習生は急拡大。12年末には87人に過ぎなかったが、昨年末には6144人と実に70倍増だ。その分、JMAの収入も増える。さらに移民法成立で受け入れ数が増えれば、利権が膨らむ構図である。

「JMAへの支出は監理団体から、零細企業や農家などが大半を占める受け入れ先に転嫁され、重い負担となる。そのシワ寄せは実習生の賃金抑制にはね返る。政治の利権が実習生の低賃金を生み出す結果を招いているのです」(出井康博氏)

 少なくとも、与党に揚げ足を取られる前に、福山氏は足抜けすべきだ。

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