「券売機」軽減税率の導入で浮上する深刻問題
12/5(水) 5:50配信
 生活必需品の消費税率を低く抑える低所得者対策として導入される軽減税率。2019年10月の導入まで1年を切る中、飲食店で見かける券売機をめぐり、思わぬ問題が浮上している。

 今回の税制改正で、飲食店では持ち帰りであれば税率8%、店内飲食であれば10%というように、同じ商品でも2つの税率が存在することになった。仮に本体価格が300円の牛丼の場合、持ち帰りでは税込み324円、店内飲食では同330円となる。

■1円玉に対応する券売機はない

 本体価格が同一だと、異なる税率によって1円単位で支払う可能性が出てくる。そこで対応を求められるのが、券売機を設置している飲食店だ。

 「1円玉や5円玉に対応する券売機は、そもそも取り扱っていない。競合のラインナップでも見かけたことはほとんどないですよ」。大手券売機メーカーの関係者はそう話す。街のラーメン店やサービスエリアのフードコートなどでよく見かける券売機は、10円、50円、100円、500円に対応する一方で、1円や5円が使えるものはほとんどない。

 前出のメーカーが券売機を世に出したのは1980年代後半のこと。以前から普及していた飲料などの自動販売機をベースに開発されたこともあり、「券売機の開発当初から1円や5円を使用するという想定がなかった」(前出の券売機メーカー関係者)。

 1円玉については券売機での取り扱いに技術的な問題もある。券売機は入れた硬貨を貯めて、つり銭で払うという循環が必要となる。1円玉は1グラムと、硬貨の中では最も軽く柔らかい。そのため券売機の中で硬貨自体が傷つきやすいという欠点もある。

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 1円単位での対応が難しいことから、券売機を使用する飲食店では価格設定の選択肢が限られてくる。券売機を使う飲食チェーンの関係者は「本体価格を持ち帰りと店内飲食で別々に設定して、税込み価格を統一する可能性が高い」と話す。

 仮に店内飲食の本体価格を300円、持ち帰りの本体価格を306円とすれば、税込み価格はいずれも330円となる。そうすることで、10円単位の券売機でも対応が可能というわけだ。こうした価格設定は国税庁も容認している。

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今回は生活必需品とみなされた飲食店の持ち帰りや宅配の税率を8%に据え置く反面、店内飲食は10%に引き上げられる。ただ券売機のような技術的な問題などを理由に、税込み価格を同一とすることを国税庁が認めるということであれば、政府が掲げた“低所得者対策”という位置づけはどうなるのか。いずれにせよ、外食企業に残された準備時間はそう多くない。

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https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181205-00253222-toyo-bus_all