米国皮膚科学会によると、アメリカ人男性の4分の1が25歳頃から徐々にハゲ始めるという。

また女性であっても他人事ではなく、40代にもなれば、4割の人で髪が薄さが目につくようになるそうだ。

少しずつ薄くなる髪と、広がるおでこほど悲しみ誘うものはないが、なんと加齢による薄毛はもうすぐ治せるようになるかもしれない。

アメリカ・ニューヨーク大学医学部の研究者らは、年をとると髪の毛が成長しなくなる理由を解き明かした。

傷を負った皮膚は毛が生えにくくなるが、これは年を取って毛が成長しないのと同じメカニズムなのだという。

今回の研究で、傷のある皮膚に毛を再生することに成功した。ということは、年を取って毛が生えてこなくなった人にも有効であるということだ。

ニューヨーク大学医学部のイトウ・マユミ博士らが調べたのは、マウスの傷を受けた皮膚にある繊維芽細胞とヘッジホッグシグナル伝達経路だ。

繊維芽細胞は、皮膚や髪の形や強さを維持するうえで大切なタンパク質であるコラーゲンを分泌する。

さらに傷を治癒するプロセスを助けもするのだが、それによってコラーゲンが溜まった皮膚では、髪の再生が滞ってしまう。

一方、ヘッジホッグシグナル伝達経路は、細胞同士がコミュニケーションを図るために使われる経路で、毛包が形成される子宮内の胎児では非常に活発なことが知られている。

だが年をとって細胞が成熟したり、皮膚を傷つけたりすると活動が低下してしまう。

そこでイトウ博士らは、マウスを使った実験で、ヘッジホッグシグナル伝達経路を活性化させてみた。

これによってマウスの細胞間のコミュニケーションを刺激すると、4週以内に毛が再生し、さらに9週後には、毛根と毛幹が現れはじめた。

「この結果は、ヘッジホッグシグナル伝達経路を通じて繊維芽細胞を刺激すると、これまで傷が再生するときには見られなかった髪の再生が促されることを示しています」とイトウ博士は話す。

怪我や火傷などで髪が生えなくなってしまうと、容姿が大きく損なわれてしまうが、現在の医学ではこれを元どおりにすることはまだできない。

今回の発見は、そうした傷を負った皮膚の髪を再生させることへ向けた前進であることはいうまでもないが、年をとった皮膚における発毛を促進することにもつながると期待される。

じつはヘッジホッグシグナル伝達経路を刺激したほかの実験では、これによって腫瘍が生じるリスクが高まることが明らかになっていた。

そこでイトウ博士は、このリスクを避けるために、毛包の根っこ(皮膚乳頭)が最初に現れた皮膚表面の真下にある繊維芽細胞だけを刺激した。

イトウ博士によるとこの実験は成功したという。腫瘍リスクの増大させることなく発毛を促進できれば、怪我をした皮膚を本当の意味で再生させる医療に近づいたのだ。

現在、発毛効果がきちんと認められている薬には副作用がある。

たとえば、ミノキシジルは、頭皮に泡か液体の形で塗り込むと、血行を良くし、毛包に栄養を与え、男女ともに3分の2の人に発毛効果が現れる。

しかし、人によっては心拍数の上昇、足のむくみ、胃の痛みといった副作用がある。

また男性にしか効果がないフィナステリドは、テストステロンをハゲの原因となるホルモンであるジヒドロテストステロンに変換する酵素をブロックする。

男性の8割で発毛効果が得られるが、60人に1人の割合で勃起不全になる恐れもあり、このリスクは服用期間が長引くほどに高まる。

イトウ博士の今後の目標は、髪の再生を促すための薬剤標的を特定することだそうだ。

もしこの研究がうまくいけば、副作用のない画期的な発毛剤が誕生するのかもしれない。また髪の話をしたっていい時代がすぐそこに来ているのかもしれない。

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